名将が称賛した2人の教え子の成長エピソード
鍛治舎監督の育成プランを支えたピースの1つゼット測定。これは、「野球が上手くなるためには何が足りていないのか」というのを知ることを目的とした測定だと桐畑さんは語ると、続けて上手くなるために必要になることを、このように話す。
「上手くなるのに力だけあれば良いなら、柔軟などは計測する必要はありません。ですが、最低でもゼット測定で設定している20項目は必要だと思うんです。
野球は非常に難しい動きをしますので、それらに対応できるようにちゃんと動かせたうえで、自分の体に相応しい筋力を持つ。これがいい野球選手に繋がると思うんです。だから体を大きくすることは正しいけど、一方では間違っていると思います。やみくもに大きくしても動かせなければ意味がない。ケガに繋がってしまっては良くない。3年間、ケガをせずに戦うために最低限必要なことが、ゼット測定には含まれていると思っています」
その証拠に、ゼット測定は実施している全国のチームを対象にしたランキングで、「1年目は全国でも中盤くらいでしたけど、わずか1年でどの項目でも全国1位の数字を出しました」と秀岳館時代に担当をしていた北野さんは振り返る。
特に、「4季連続で甲子園に出場していた頃は、全国トップ10に16種目がランクインしてしまうくらい、高い数字を残していました」と当時の選手たちのすさまじさを物語る。
先述したような過酷なトレーニングに耐え抜き、そしてパフォーマンスに結び付けた成果だが、なかでも鍛治舎監督のなかで2人の教え子は、多くのOBたちのなかでもひと味違ったそうだ。
「秀岳館のときは九鬼(隆平)ですね。中学時代は控え選手でしたけど、入学当時は総筋肉量と呼ばれるゼット測定の指標は、850キロと2年生と遜色ない筋力。ただバランスが悪かったので、強化して整えたら、彼は妥協をしなかったので、最終的に1177キロまで総筋肉量を伸ばして、最終的にはU-18代表では4番に座り、ソフトバンクにはドラフト3位で入団しました。
県岐阜商ならば、佐々木(泰)です。彼は入学時、総筋肉量で750キロくらいでした。スイングスピードも125キロくらいでしたけど、1年間で一気に230キロほど総筋肉量を増やして。最後はコロナの関係でやりきれませんでしたが、それでも総筋肉量は1080キロ程度で、スイングスピードも150キロ近くまで伸ばして、青山学院大へ進学しました。そして4連覇、主将としてチームを引っ張り、広島からドラフト1位で指名を受けました。この前のオフも県岐阜商に顔を出したみたいですが、そこでもトレーニングをして帰ったと聞いています」
どちらもNPBの道へ進んでいった教え子。その2人について、「やっぱり頑張ったら、結果が付いてくるなという印象が残る2人でした」と語る鍛治舎監督の表情は、どこか嬉しそうに見えた。