「陽の目を浴びない場所に光を」をコンセプトに始動して3年。ジャパンウィンターリーグが新たなステージを迎えようとしている。

 同リーグは各カテゴリーで出場機会に恵まれなかった選手のアピールの場や、野球を通じた国際交流の場として2022年に設立。昨年もMLB・NPBなど8か国40球団以上のスカウトが来場するなど、移籍先を模索する選手にとっては貴重な機会となっていた。

 昨年はリーグ初となるNPB選手の派遣が決まり、プロ野球ファンの増加や、認知拡大の動きが進んでいた。先月末には西武の二軍・三軍キャンプにリーグ本塁打王を獲得したロビー・テネロビッツ外野手がテスト生として参加が決まり、徐々にリーグの熱も高まりつつある。

 そんな中、今回新たに発表されたのが昨年のリーグでスタッフとして参加していたサラ・エドワーズさんの野手総合コーチ就任だ。行先は台湾プロ野球・CPBLの中信兄弟。アジアのプロ野球界では初となる女性コーチの誕生となった。

 ジャパンウィンターリーグの代表を務める鷲崎 一誠氏は、今回契約に至った経緯をこう語る。

「日本やアジアでコーチ契約を結ぶというのもリーグに来た一つの目的でした。『出会いの場所がある』と期待して参加してもらった中で、中信兄弟さんからタイミングよく声をかけてもらいました」

 サラさんは米国で生まれ、オランダなど4カ国でソフトボール選手としてプレー。2020年にはイタリア代表にも選出された実績を持つ。23年にはMLBフィリーズの打撃コーチに就任し、球団史上初の女性オンフィールドコーチとして指導した実績もある。

 そんなサラさんの指導を間近に見てきた鷲崎氏は「選手の気持ちを把握する能力に長けています」と絶賛。続けて「中信兄弟の平野 恵一監督が、技術指導の部分はもちろん、サラ自身の人柄にも惚れて、チームの雰囲気が相当よくなるんじゃないかと期待していると思います」と話していた。

サラ・エドワーズさん

 今回の事例は野球界にとって大きな一歩となる。鷲崎氏は大学時代に出場機会が得られなかった経験から、「野球界のすべての選手に光を当てたい」との思いを持ちリーグを発足したが、そのコンセプトは決して選手だけのものではないと語気を強める。

「自分たちは人が多く集まって『化学変化の起きる場所』を作りたいと思っていました。リーグでは野球選手だけでなく、指導者やインターン生としてトレーナー、スポーツビジネスを学びたい学生も参加しています。そうした人たちがプロ球団に採用されるという事例を作れたという点では一つの成功例だと思います」

 とは言いつつも、毎年冬に行われているNPBの12球団合同トライアウトとは認知度や規模に差があることは事実だ。リーグの価値を上げるべく鷲崎氏は見据えているのは野球界全体への浸透だ。

「今回NPB球団が初めて参加して、リーグを知ってくださっている人も多いですけど、まだまだ大きなうねりになるには少ないと感じています。これをトライアウトのように文化として構築していかないと、選手の取りこぼしもあります。トライアウトに来る選手は毎年変わりますし、100%選手達に伝わっていないと意味もないので、そこを目指したいです」

 4年目のシーズンに向け、現在もさらなるリーグの拡充に着手しているという。プロ野球の新たな風物詩となるのか。今後もジャパンウィンターリーグから目が離せない。