キャンプがスタートし、ルーキーのパフォーマンスが注目を浴びている。
高卒新人ながらその打棒を評価されているのが巨人ドラフト1位の石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)だ。高校通算26本塁打の長打力、公式戦では毎回4割以上の高打率を残し、着実に評価を高めてきた昨年の高校生NO.1野手だ。
キャンプインしてからのフリー打撃で痛烈な打撃を見せ、野球評論家たちからも絶賛されている。
石塚の打撃の長所は、コンタクト力の高い打撃だ。花咲徳栄の岩井隆監督は「命中率」という言葉を用いて選手に打撃指導する。そのためにはインパクトまで無駄のないスイング軌道、タイミングの取り方、体の使い方を落とし込んでいく。石塚も取材では再三、その言葉を使いながら自分の打撃を語っていた。
花咲徳栄から高卒でプロ入りした右のスラッガーには、野村佑希(日本ハム)、井上朋也(ソフトバンク)がいるが、この2人と比べると飛距離は劣るが、コンタクト力が高く、打率が残せる。打撃練習を見るとライナー性の打球でスタンドインしていく。タイミングの取り方もよく、スイング軌道もいつ見ても乱れがない。調子の波が小さい選手だ。
昨夏の埼玉大会では26打数12安打1本塁打11打点 打率.461を記録。甲子園の1安打を含め夏13安打は遊撃手のドラフト候補では田中 陽翔内野手(健大高崎-ヤクルト)に並んで最多タイだった。
石塚の打球で特徴的なのは、右中間へライナー性の打球が伸びること。昨年の大学日本代表との壮行試合では篠木健太郎投手(法政大-DeNA)の149キロのストレートを右中間を破る長打を打ったり、アジア大会本戦でも韓国の150キロ超えの剛腕相手にも右中間へ三塁打を打っていた。こうした打撃を見れば、プロ二軍レベルの速球にも順応するスピードは早いだろう。
高校時代はショートをやっていた。いわゆる華のある守備を見せるショートではなく、堅実な動きを見せる。高校時代はシングルハンドなどはあえてやらず両手捕球を心がけていた。巨人の一軍には門脇誠内野手(創価-創価大)がいて、石塚の同期でドラフト2位の浦田 俊輔内野手(海星-九産大)と比べると、スピード面が劣る。ショートよりサードで生きるタイプと見ている。
そんな石塚の1年目は期待の若手スラッガー・浅野 翔吾外野手(高松商)のように二軍で多くの打席機会を経験することになるだろう。浅野の1年目は二軍で77試合で、263打席(237)与えられ、7本塁打、27打点、打率.262だった。石塚も高卒1年目から出場70試合〜80試合で、本塁打5本、30打点、打率.250以上は期待をしたい。走塁を見ると脚力も高く、二塁打、三塁打も多く期待できそう。
2年目から一軍試合出場の機会が増えて、3年目、もしくは4年目で大ブレイクを狙っていきたい。将来的には本塁打10本〜20本、打点100前後、打率3割を毎年狙える中距離打者が完成形だ。プロに進む中で打球に角度をつける打法を会得すれば、20本以上も狙える潜在能力の高さもある。
現在のサードは坂本勇人内野手(光星学院)だが、次世代のサードを担うのは石塚だ。故障なく右肩上がりの成長を見せ、1年目から大きなインパクトを与えることができるか。
石塚 裕惺(いしづか・ゆうせい)
2006年4月6日生まれ 千葉県八千代市出身
中学時代は名門・佐倉シニアに在籍し、主軸打者として活躍。控え投手には菊地 ハルン投手(千葉学芸-広島)がベンチ入りしていた。
花咲徳栄では、1年秋からベンチ入りし、サードでスタメン出場。2年春からショートに転向した。2年夏の埼玉大会では19打数9安打の活躍で、ドラフト候補として評価を高め、2年秋の関東大会では初戦の横浜戦で先制2ランを打つなど、6打数5安打の大当たり。3年春には高校日本代表候補に選出され、3年夏は12安打の活躍で、自身初の甲子園出場を決めた。甲子園では初戦敗退に終わったが、総合力の高さを評価され、高校日本代表に選出された。
アジア大会では17打数5安打、6打点だった。24年のドラフトでは巨人、西武がハズレ1位で競合し、巨人が交渉権を手に入れた。