インタビューに答える岡本投手
入学当初は捕手だったが、1年生の秋に投手へと転向した。その理由を小椋監督はこう語る。
「腰の回転が横振りなので、ベースの上に投げるのが難しくて、セカンドベースの左右にいつもズレていました。腰が横振りで、地肩が強いから、アンダースローのピッチャーで、球速があったら高校生は打てないというイメージを持ちました。アンダースローで一回投げさせてみると、なかなか良いボールを投げるので、『これはできるぞ!』という話で、アンダースローのピッチャーになりました」
中学生の頃も投手経験はあり、その頃は上手投げ、横手投げ、下手投げを使い分けていたという。高校で投手に転向してからも横手投げと下手投げの二刀流だったが、「サイドスローになると、150キロ近く投げないと通用しないと思っていて、アンダースローがプロへの一番の近道だと思いました」と昨夏の大会が終わってから下手投げ一本に絞った。
津森 宥紀投手(ソフトバンク)や松本 凌人投手(DeNA)など近年にプロ入りしている横手投げの選手はパワーピッチャーが多い。そういう意味でも岡本の見立ては正しいと言えるかもしれない。
NPBで活躍した下手投げ投手といえば、渡辺 俊介氏(元ロッテ)、牧田 和久氏(元西武など)、中川 颯投手(DeNA)といった名前が挙がるが、岡本は彼らのような正統派な下手投げとは少し毛色が違う。素早いモーションからスナップを効かせて投げるため、球速以上に速く見える印象だ。
「バッターの手元でグっと伸びてくるので、高めのストレートは振ってしまいます。初見じゃ打てないと思います。ボールが揺れるので、キャッチャーが初めは困っていましたね」と小椋監督は言う。希少価値が高く、短期決戦で強みを発揮する投手だ。
投球練習をする岡本投手
昨年9月からはロッテのトレーナーを務めていたこともある影石 言光氏の指導を受け、これまで課題だった下半身の柔軟性向上に着手。「下半身の筋力と柔軟性を向上させて、135キロを目指しています」とさらなる成長を図っている。
瀬田工では身体能力の高さが売りだった2学年上の平田 大樹外野手が育成ドラフト2位で日本ハムに進んでいる。「平田さんのプレーを見て凄いと思っていましたが、平田さんで育成と思うと、自分が行けるのかなという感じはありますね」とプロが厳しい世界なのは百も承知。それでも覚悟を決めて、高卒プロ入りを目指している。
昨秋はマイコプラズマ肺炎に感染して登板できず、チームも初戦敗退。「最近は私学がずっと甲子園に出ているので、『公立でも甲子園に行けるんだぞ!』というところを見せたいです」と夏こそはエースとして活躍して、チームを甲子園に導くつもりだ。
瀬田工は春2回、夏1回の甲子園出場経験があり、1980年には春夏連続出場して、夏に4強入りを果たしている。その時のエースだった布施 寿則さんも下手投げ。「何かの縁があるんじゃないかなと思っているので、その頃の瀬田工の勢いを見せられるように春、夏と頑張っていきたいと思っています」と意気込む。
激戦が予想される今年の滋賀県。プロ注目のサブマリンが古豪復活の立役者となる。