近年、本格的なカメラを持った野球ファンがスタンドからレンズを構える姿を多く見かけるようになった。彼らが撮影したプロ顔負けの写真がSNSにアップされ、人気を呼んでいる。また、野球選手をいわゆる「推し活」の対象として撮影することも一つの楽しみ方となっているようだ。

 一方で観戦マナーを守らない一部のファンや、試合の模様を動画投稿サイトなどに公開し、収益を上げるファンの行動が問題となっている。

 そんなさなかの2月1日、NPBで撮影や配信等の規制について新たなルールが施行された。公式戦はもちろん、オープン戦や二軍など全ての試合に適用される。

 注目されるのは、〈何人も、以下の写真・動画等を配信・送信してはならない〉という記載である。つまり、SNSへの投稿は原則禁止となったのだ。

 一方で、学生野球では、写真・動画撮影の一元的なルールはまだない。対応は各都道府県の高野連、大学の各リーグによってさまざまだ。

 だが、学生球界でも写真・動画撮影への規制は着実に進んでいる。この風潮の中、一人の熱烈な野球ファンの「カメラ女子」に話を聞いた。

選手の家族から言われた「ありがとう」

 話してくれたのは、主に大学野球を中心に撮影するSさん(仮名)。家族が野球経験者だったこともあり、野球を見るようになった。

 今ではおよそ100万円近い機材で撮影。趣味の一環として写真を自身のSNSにアップしているという。会社員として働きながら、野球シーズンは毎週末になると必ず球場に足を運ぶ。遠方での試合は前日に現地入りして観戦にいくほど学生野球に熱を注いでいる。

「仕事もしているので早起きはつらいですね。体力的にもいろいろ大変ですが、やっぱり全然『見たい』っていう気持ちの方が上回っています。選手が頑張ってる姿を見たいんです。断片的にではなくて、やっぱり通年で見たい。一試合も、一瞬も逃したくないんです。そんな強いこだわりがあるんです」

 そこまで苦労して写真を撮り続ける理由はどこにあるのか。

「私のSNSを見た選手のご家族だったり、選手ご本人から『ありがとう』など感謝のお言葉いただいたりするんです。以前、大学で野球を終わりにする予定だった選手の写真をアップしたら、ご家族から『写真をこれだけ撮ってくれてありがとう。すごい思い出になる』という話をいただいたこともあります。自分の写真に反響があって、誰かの人生の一部に役に立っているのかなっていうのを感じています。写真を撮り続けている一番の理由は、そういうところだと思います」

カメラ女子の“被害妄想”

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