阪神の長所は高い投手力だ。優勝した2023年のチーム防御率はセ・リーグダントツ1位の2.66。昨年もリーグ2位の防御率2.50で、1位巨人の防御率2.49と大差がなかった。今年も投手陣の調整がうまくいけば、安定した働きが期待できる。そんな中、即戦力として活躍が期待されるのがドラ1左腕・伊原 陵人投手(智弁学園-大阪商業大-NTT西日本)だ。170センチと小柄であるが、常時140キロ中盤・最速149キロの速球は数字以上にキレがあり、空振りが奪える。昨年1年間の公式戦では75回を投げ、78奪三振、防御率1.56と抜群の安定感を誇り、1年目から先発ローテーション入りが期待されている。

 阪神ОBの福永春吾氏も伊原のボールの強さ、総合力の高さを評価する。

「直球はしっかりとコーナーに投げ分けができています。さらに変化球も低めに集まっていて、安定した投球が期待できます。そして都市対抗の投球を見ると、ストレートの回転数は2500ほど出ていて、これも優秀な数字です」

 プロの投手では回転数の平均は2200ほどで、キレの良い投手は2400ほどといわれ、2500回転を記録する投手は稀であり、伊原のストレートは常時140キロ中盤ながら勝負できるキレ味がある。

また、福永氏はボールの出どころの見にくさも長所に挙げた。

「テークバックが小さく、上から『ポン』という感じでキレのあるストレートを投げることができているので、打ちにくいですよね。変則フォームでありながらも、しっかりとボールを強く叩く動きができています。そのためキレの良いストレートが生み出されるのです。阪神は先発、中継ぎ問わず良い左腕が多いですが、十分に勝負ができますし、競争を勝ち抜いた上で活躍も期待できます」

 福永氏は1年目から活躍するカギは「良い状態のフォーム、コンディション」維持を課題に挙げる。

「実戦的なフォーム、回転数の高いストレート、ボールの出し入れを見れば、完成されている投手です。自分の良さを1年間通して出し続けることができるかが活躍できるカギだと思います」

 伊原はキャンプインしてからのブルペン投球では、高い制球力を示し、首脳陣から高評価されている。

 現在、阪神の先発陣は、昨季13勝の才木 浩人投手(須磨翔風)、同11勝の大竹 耕太郎投手(済々黌)、7勝11敗ながら規定投球回に達した村上 頌樹投手(智弁学園)、投球回100回以上を14年続けている西 勇輝投手(菰野)の4名のローテーション入りはほぼ確定している。

 残り2枠を速球派左腕・高橋 遥人投手(常葉菊川)、技巧派左腕・伊藤 将司投手(横浜)、昨年先発に転向し、8勝のジェレミー・ビーズリー投手、新外国人の157キロ右腕・ジョン・デュプランティエ投手、復活を誓う西 純矢投手(創志学園)などで争うことになり、ライバルは非常に多い。

 8日、9日には紅白戦が行われる。前評判通りの投球を見せて、開幕ローテーション入りへ向けて、アピールできるか。