1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。
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センバツ連覇を狙う健大高崎を筆頭に、群馬は実力ある学校は多い。前橋育英や桐生第一、樹徳、前橋商……。私立、公立問わず、毎年熾烈な戦いを演じている。
中でも、健大高崎を超える県内3位タイとなる夏の甲子園出場9回を誇るのが前橋工だ。センバツ出場も合わせると計13回出場。確かな実績を持つ学校だが、2010年のセンバツを最後に甲子園からは遠のいている。
「よく応援してくださる方々からは『俺が死ぬまでに頼むから、もう1回甲子園に行ってくれ』ってよく言われます。そういう一言ってありがたいですし、嬉しいです」
チームの指揮を執る高橋 寛人監督はそう語る。
「過去に実績を築き上げた学校であることは決して忘れてはいけません。何よりも私が誰よりもチームを愛して、伝統を繋いでいくことに強い思いでやっていかないといけないと思っています。群馬のレベルが高まっているのを日々感じますが、そこで公立だからというのを言い訳にはしたくない。同じ土俵ですので、目線は常に高くしたいと思っています。練習環境も非常に充実していて、申し分ありませんから、最大限活用してやりこみたいと思っています」
そんな前橋工は、2年生7人、1年生23人という構成だ。主将である小澤 空竜が中心となって、2年生が自覚をもってチームを引っ張っているという。しかし、下級生時から試合に出場していた選手が少なかったため経験は浅い。
「入学当初、2学年上には星野(ひので・現日本ハム)たちがいましたけど、ともに過ごした時間は短くて……。1学年上の先輩たちは、星野たちと一緒にやった分、高い意識をもって取り組んでいて、小澤たちも食らいついたんですけど、試合には絡み切れなかった。(昨年のチームでは)今の2年生はベンチ入りも少なかったので、創意工夫を凝らしてチームを作りました」
ただ結果はそう簡単に結びつかなかった。秋季大会のシードもかかった県内のリーグ戦で、前橋工は決勝トーナメントに勝ち残れなかった。「経験値も少なかったので、勝って自信をつけたかった」との思惑とは裏腹に、ノーシードで秋季大会を迎えることになった。
ゆえに県大会も「少し厳しい結果になるかもしれない」と覚悟はしていたが、ベスト16入りを果たした。
収穫の多い秋かと思われたが、髙橋監督の考えは違う。
「初戦はコールド勝ちが出来そうで出来なかった。その詰めの甘さを実感しました。2回戦(シード校・桐生市立商戦)こそ格上相手にチャレンジャー精神で勝てたけど、そのあと(3回戦・関東学園大付戦)は何もさせてもらえなかった。やっぱり最後は実力以上のものは出ないことを学びました」
そんな秋だったからこそ、やるべきことは「技術以上に基礎筋力とか、とにかく体を鍛えること」だった。その中で「チーム内競争が生まれたら活気も出てくると思うので、練習の質も高まると思うんです」と競争意識を持って取り組んでいる。
高橋監督は言う。
「選手たちはウチを選んできてくれています。家族も含めて『前橋工だったからこんな思いができた』とか感じてもらいたい。こうして一緒に戦うのも何かの縁の巡りあわせだと思います。最後はいい思いをしてもらえるような3年間にしたいと意識はしています」
伝統校は2010年以来の聖地を目指す。