1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。

**************

「今回は本当に悔しそうな顔をしていて。春まで時間があるんですが、すぐに大会が待っているような顔でした。気迫は凄かったですね。本気で優勝を目指したところで4位。3位決定戦で敗れたので、一番悔しさが残る敗戦でした」

 及川将史監督は振り返った。

 東北大会出場がかかった秋季岩手県大会3位決定戦、専大北上は延長11回タイブレークの末に、久慈に4対5でサヨナラ負け。東北大会出場にあと一歩届かなかった。本当に悔しい敗戦だった。

 主将・小岩 悠弥内野手を中心に新チームは始動した。先輩たちの世代から多くの選手が試合に出場しており、早くから経験を積んできた。だからこそ、新チームのこの1年にかける思いの強さを及川監督は感じ取っていた。

「先輩たちの夏が終わったときに、負けて悔しいという感覚はもちろんあったと思うんです。それと同時に多くの選手が試合に出ていた分、『先輩たちの夏を終わらせてしまった』というような悔しさも2年生全体には見てとれました。

 選手間ミーティングを経て新チームのスローガンを『革命軍団』としたんですが、その理由は『もう負けたくない。何か違うことをやらないと結果が変わらない』でした。勝ちたいという思いの強さは練習から伝わる選手たちでしたので、そういうことを聞いて、指導者も一緒に変わらないといけないと思って、スタートしました」

 前チームは2024年の春こそ県ベスト8まで勝ち上がった者の、夏は初戦で花巻南に2対3の惜敗。その悔しさがあったからこそ、新チームは“革命軍団”というスローガンに強い思いを込めた。

 その代表的な取り組みが、選手間でサインを出していく野球だ。

「8月上旬に思い切ってやることにしました。選手交代だったり、イニング毎の指示だったりは私が出しますけど、打席に立つ選手がサインを出すようにしました。こうなると、試合中に私はやることがあまりない。すると試合開始までの準備期間で、選手と話し合う練習スタイルになりました。その結果、すべての質が良い方へ向かっていっている手ごたえがあります」

 もともと専大北上は「雪はデメリットではないと思うので、年間通じてやっています」とトレーニングを重視するチーム。体組成計などを駆使して、入学時から数字を積み重ねている。選手、指導者が一緒になって共創するスタイルだったからこそ、ノーサインの形は相乗効果を与えたというわけだ。

及川監督は最終目標である夏の大会を見据えて、チームをじっくり仕上げるつもりだ。

「強豪校と呼ばれる選手とは、入学段階で数字は違うと思うので、その差を詰めていく。筋力が高まれば、プレーの幅が広がります。あとは最後の夏こそ、『勝ちたい、打ちたい』と思って力むはずなので、逆に脱力してやりたいです。脱力しても力を発揮できるかが大事だと思っています。

 岩手の場合は春が終わって、夏までの期間は1か月くらい。勝ちたいと思うほど焦って技術練習が増えてしまうので、(トレーニングの)数字を落とした状態で戦うことが、夏は続いていたんです。今年の春は我慢しながら、夏にしっかり力を発揮できるような練習計画でやっています」

 秋の時点では、「パワーというよりも、守備と脚力に長けていて、ミート力が高い選手が頑張ってくれた」と及川監督は分析する。だからこそ、夏までに力をつけてくれたら「全然違う野球になってくるかなという期待感はあります」と楽しみにしているようだ。

 秋の悔しさを糧に、春、夏の巻き返しへ。“革命軍団”が岩手に新風を巻き起こすか。専大北上の躍進を楽しみにしたい。