春季キャンプ真っただ中。阪神の支配下登録人数は現在66名だ。残り4枠を巡って、11名の育成選手が激しく争っている。

投手では4年目左腕・伊藤 稜投手(中京大中京-中京大)が最速154キロの速球を投げ込み、2年目の右サイド・松原 快投手(高朋-ロキテクノ富山-富山サンダーバーズ)が好投。野手では俊足打者・福島圭音外野手(白鴎大)がリードしている。また、育成落ちとなった21年ドラフト1位の森木 大智投手(高知)も復活を目指している。

 そんな中、巻き返しを狙うのが、育成1年目のルーキー・工藤 泰成投手(明桜-東京国際大-徳島インディゴソックス)だ。徳島時代は最速159キロを投げ、最多勝となる8勝を挙げた。どの試合でも平均球速150キロを超えるスピード、68回を投げ、71奪三振と三振を奪う能力は魅力的だ。一方で、好不調の波が激しく、制球力に欠けるところが課題と見られ、ドラフト会議では本指名候補に挙げられながらも、育成1位指名となった。これについて工藤は「指名された瞬間は悔しかったですね。支配下で行こうと1年間やっていたので…」と語っている。

 目標は1年間での支配下昇格だ。そのためにはどうすればいいのか、徳島インディゴソックス、阪神でプレーした福永春吾氏に語ってもらった。

「工藤投手の場合、ストレートは本当に強いし、最速159キロを計測しているように、球速も並外れたものがあります。育成選手の場合、誰にも負けない自分の強みを作って勝負するしかない。彼の場合、まずはストレートの強さがあります。工藤投手の強いストレートは能力が高い阪神投手陣の中でも上位に入るでしょう。あとは、再現性ですね。

加えて、確実に相手を打ち取れる変化球が必要になるでしょう。変化球もただ投げるではなく、打者に悟られないように強く腕を振って確実に抑えるコースに投げきることが重要です」

 工藤の強みを出し続けるポジションとして中継ぎが合っていると福永氏は分析する。

「NPBの先発になると必要になるスキルが多岐にわたります。制球力はもちろんですが、目先を変えるためのカーブ、決め球、カウントを取るための変化球。こうしたスキルを求めていくのは、工藤投手のスタイルに合っているかというとそうでもない。工藤投手のボールの強さを活かすには中継ぎが合っているかなと思います」

 工藤の参考になりそうな同じ阪神の中継ぎタイプの投手に、佐藤 蓮投手(飛龍-上武大)がいる。2020年ドラフト3位で入団した佐藤は不調で育成選手となったが、昨年二軍で49試合に登板して、2勝3セーブ、48.2回、51奪三振、防御率2.03の好投をみせ、7月20日に支配下昇格。一軍登板も果たしている。

 育成選手の支配下昇格は7月末まで。159キロの剛腕が一軍マウンドで躍動する姿を見てみたい。

■阪神育成選手一覧

【投手】

鈴木勇斗

小川一平

松原快

伊藤稜

工藤泰成

早川大貴

森木大智

ベタンセス

マルティネス

【捕手】

嶋村 麟士朗

【内野手】

川﨑俊哲

【外野手】

福島圭音