自分はスケールで勝負できないので、投球内容にこだわりたい

 リハビリ期間は体幹、肩、ヒジのインナーマッスルを鍛えるトレーニングを送り、走れるまでに右腕の状態が回復したのち、短距離、長距離のランメニューを繰り返し行った。夏の大会前から投球を再開。トレーニングの成果もあり、直球の威力が戻ってきた。2年秋も大事を取って登板しなかったが、取材した日には投球練習を行い、140キロ台のストレートを投げ込んでいた。

 新田の特徴でもある回転数の高いストレート。一般的な高校生は2100から2200だが、新田は2400回転を記録する。

「自分は指が長くないので、指の間を狭くして、リリースの瞬間につまむような感覚で投げていました。自分の中で数字としても良いと知ったのは高校に来てから。回転数だけではなく、回転効率の数値も良いと教えてもらいました」

 投球フォームでは踏み出す足(左足)の使い方がポイントだ。

「まだできていないのですが、自分は踏み出す足が突っ張ってしまって、リリースポイントが乱れていました。それを改善できるようになると、リリースも安定して、伸びのあるストレートを投げることができます。今日(取材日)の投球はまだまだ駄目ですね。リリースポイントもまだ安定していないので。徐々に投げられてきているので、これから上げていきたいです」

 プロ入りした菊地の存在は大きな刺激となっている。

「身近のところからプロ野球選手が出て、すごいと思いましたし、自分もプロ野球選手になりたいと思いました。ハルンさんは熱心にトレーニング、走り込みをやっていて、すごかった。自分も一緒になってトレーニングしているうちにボールも速くなってきました」

 高卒プロを目指しながら、レベルアップを誓った新田だが、菊地のように体格を生かして勝負できる投手ではないことは自覚している。春へ向けてアピールしたい点について語った。

「気持ちの部分とストレートの伸びは負けたくないです。ストレートは空振りが奪えますし、目標は最速150キロ、常時140キロ中盤です。スライダーにも自信があります。自分は身長がないので、ハルンさんのようにスケール感で勝負はできない。投球内容で勝負しないといけないですね。防御率、四死球率の少なさなど投球成績で、ほかの投手を圧倒することが必要不可欠だと思います」

 最後の夏へ向けて「2年生の時は怪我で投げられなくてチームに迷惑をかけました。このチームで甲子園に行けるよう、勝利に導く投球をしたいと思います」と意気込んだ新田。「彼ならやってくれると思います」と高倉監督も全幅の信頼を寄せる。1年の我慢の時を経て、目指すは県内NO.1ピッチャー、そして菊地に続くプロ入りである。

新田 継吾投手(にった・けいご)

167センチ72キロ。右投げ右打ち

アクアファイターズでプレー。原中では瀬谷ボーイズでプレーし、最速137キロ右腕として注目された。1年春からAチーム入りし、強豪相手との練習試合で経験を積むと1年夏からベンチ入り。1年秋には先発を任された。2年春の練習試合で右肘を骨折した。2年夏から投球を再開し、飛躍へ向けて準備を行っている。