1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。

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 全国でも有数の激戦区として知られる愛知県。ゆえにこんな声も出てくる。

「これだけ加盟校数が多いと、他県が羨ましく感じることもあります。1人の投手で勝ち上がったとか、9人で勝ち上がったとか。そういうことは愛知だと考えにくいので」

 そう語ったのは、大府の指揮官を務める中嶋 勇喜監督だ。2022年よりチームを指揮している。昨秋は県大会に出場したものの、初戦で安城に0対1と惜敗。現在は春に向けて、練習を重ねている。

「スピードや正確性、体つき含めてレベルアップしてきた」と中嶋監督だけでなく、選手たちも手ごたえがあるという。しかし、「他のチームはもっと伸びている」と選手同士で危機感をもって取り組んでいるそうだ。

 現在取り組んでいる練習は、とにかく基礎・基本。基礎固めに時間を多く割く理由は、そこに愛知を勝ち上がるポイントがあるからだ。中嶋監督は言う。

「そうしないと選手層が厚くできないんです。三拍子揃った選手ばかりではないんです。選手たちはどこかに強みがあれば、弱みがある。そんな中で勝つためには、全員の強みを引き出すような采配をしながら、熱中症などのアクシデントも対応しないといけない。強豪私学に勝つことが難しい中で、そういった試合が続きます。一人の力では限界があるので、基礎・基本ができていれば誰が出てもある程度、形になると感じています」

 もう1つ、中嶋監督が基礎・基本を重視するのは、選手たちのメンタルに及ぼす影響を考えているからだ。

「ある程度基礎・基本ができてくると、高校生ですから楽しくなると思うんです。球速伸びたり、制球力が上がったり、打てるようになったり。そうした成功体験で生まれる相乗効果で、選手層を厚くしながら、120%のパワーを出してくれたらと思っています」

 春、そして夏に結果を出すため、「新基準バットになったので守り勝つ感じですが、うまくピークを持ってこられるようにしたいです」と語った中嶋監督。愛知は3月から予選が始まる。そうすると夏まではあっという間だ。だから、この冬しか時間をかけて練習をできない。

 ゆえに「無駄な1日を送るなよ」と話すこともある。簡単なことではないが、完璧にやりきった先に、思い描いていた結果が待っているだろう。この夏、大府が愛知を沸かせる戦いを見せることを期待したい。