第97回選抜高校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕(阪神甲子園球場)を迎える。大会開催を前に、出場校の過去のセンバツの戦いぶりを振り返る「出場校あの日・あの時」を紹介していく。今回は60年前の1965年、市和歌山商時代に準Vを成し遂げた市和歌山(和歌山)に迫る。

 最初の東京五輪が開催された翌年の春。市和歌山商がセンバツ2度目の出場で準優勝を果たした。初出場だった前年は初戦敗退を喫したが、屈辱を晴らすような快進撃。3番打者として打線をリードしたのは、のちに阪神で首位打者のタイトルを獲得し、監督としても「鬼平」と呼ばれた藤田平内野手だった。

 初戦は岡本喜平投手の好投で、のちにヤクルトなどで活躍する安田猛投手擁する小倉(福岡)に競り勝つと、2回戦の中京商(現・中京大中京=愛知)戦で、藤田が1試合2発を放つ。当時、センバツ史上2人目で、41年ぶりの快挙だった。

 その後、東農大二(群馬)、高松商(香川)を下して決勝に進むと、のちに大洋(現DeNA)で「カミソリシュート」を武器にした平松政次投手を擁する岡山東商(岡山)と対戦。延長13回の激闘の末にサヨナラ負けしたが、藤田は平松から2安打を放って意地を見せている。プロ野球の舞台でも、阪神の好打者と大洋の好投手として対決することになるが、高校時代の個人的な対決という意味では、藤田に軍配が上がったことになる。

 市和歌山商はその後、広島で活躍した正田耕三、ヤクルト・川端 慎吾内野手、ロッテ守護神の益田 直也投手を輩出。市和歌山となって以降でも、2021年ドラフトで、DeNA1位・小園 健太投手、ロッテ1位・松川 虎生捕手のバッテリーを輩出するなど、数多くの名選手を生んできた。

 60年前に、延長戦の末に敗れて準Vに終わった大先輩たちの思いも胸に、市和歌山ナインがセンバツの舞台で力を見せつける。

1965年センバツ市和歌山商のスコア

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