1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。

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 2025年で創立105年を迎える三重の実力校・津商。野球部は甲子園に2015年に出場しており、直近でも2022年に三重大会で準優勝を果たしている。甲子園に出場してから10年が経った今、当時からチームを指揮し続ける宮本健太朗監督は現在のチームをこう振り返る。

「10年が過ぎて、今の選手たちは甲子園というよりも、東海大会で戦っていた姿を見て来てくれていると思います。もう一度初出場の気持ちで、純粋に頂点を目指したいと思っています」

 言うまでもなく、甲子園への道のりは簡単ではない。県内には強豪・三重津田学園、昨夏の甲子園に出場した菰野などライバルは多い。強敵たちに勝つには、「目に見えない力もトーナメントを勝つうえでは大事だとすごく感じます」と宮本監督は言う。

「個々のレベルアップと技術力は必要だと話はしています。そうしないと勝負の土俵に上がれません。技術力が付けば自信をもって野球に向き合えると思うんです。加えて、日々の練習に対してどれだけ純粋に、素直に受け入れてやり切れるか。そういう素直さ、高校生としての能力が求められると思います。その点では抜群だと思いますし、どのチームにも負けないと思っています」

 近年、数字が話題になっている分、宮本監督は技術の重要性を強く感じているという。

「中学時代にコロナが重なっている選手たちなので、いい意味で自己評価を高めることは大切だと思うんです。ただ、それを他者評価よりも高めてしまって、ギャップが出来ることがあると思うので、両方の目線を持つこと。社会に出れば自然と周りから評価されることがあるので、その答え合わせをして、理解して行動することが大切だと感じています」

 その点、今年のチームは理解して行動が出来ている世代と宮本監督は分析する。そのうえで、「トップクラスの選手ばかりではないので、学年に応じて長所を掛け算していく」イメージで勝ち切るチームを目指してきた。

 ただ、秋季大会は3回戦で海星に4対11で敗退。東海大会に手が届かずに、冬を迎えることになった。

「負の連鎖ではないですが、思わぬ1つのエラーから記録に残らないものも含めると、6つ、7つ続けてしまって…1イニングで8失点。思った以上に経験不足が出てしまい、改めて高校野球の難しさを感じました」

 現在は榎本 健志主将(2年)を中心にして、秋を教訓に切磋琢磨している。

「精神的強さ、物事の捉え方が抜群で、主将としての力は大きいです。引っ張るとき、下から支えるとき、状況に応じて動ける。私が作ろうとしている組織を、選手たちも作ろうとしている。監督の立場として見守りながら、甲子園に出るため、勝つための課題や問題提起をしてあげるようにしています」

 10年ぶりに甲子園へ。まずは「とにかく春は頂点獲りに行く。勝てたら勝てた理由ができて、取れなかったら取れなかったで、何が足らないのかが目に見える。とにかく死に物狂いで春は頂点を目指してやります」と覚悟を語った宮本監督。再び津商が三重の高校野球を沸かせるか。その戦いぶりに注目したい。