第97回選抜高校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕(阪神甲子園球場)を迎える。大会開催を前に、出場校の過去のセンバツの戦いぶりを振り返る「出場校あの日・あの時」を紹介していく。今回は、世界のホームラン王として巨人で活躍した左腕・王貞治投手(現・ソフトバンク取締役会長)を擁して、1957年に優勝した早稲田実(東京)を取り上げる。
2年生エースだった王は、初戦の寝屋川(大阪)戦でわずか1安打10奪三振の完封勝利を挙げると、準々決勝の柳井(山口)戦では、5安打11奪三振無四球完封。2戦連続で2ケタ奪三振&完封勝利をマークすると、久留米商(福岡)との準決勝では、4安打完封。三振は6にとどまったが、大会3試合全完封で決勝へと勝ち上がった。
決勝では8回に3失点して完封こそ逃したが、初戦から34イニング連続無失点を続ける好投で、見事に優勝を手にした。この試合、左手中指と人差し指のマメがつぶれたことによる出血で、球が血染めになっていたことは有名だ。なお、この大会では民放初となる大阪テレビ放送が実況中継を行った。
王はその年の夏の甲子園2回戦(寝屋川戦)で延長11回によるノーヒットノーランを達成。春夏通じて甲子園の延長戦でのノーヒットノーラン達成は、いまだ王だけの記録となっている。3年春は甲子園で2戦連発をマーク。最後の夏は、都大会決勝で敗れて5季連続の出場はならなかったが、世界のホームラン王は鮮やかな残像を甲子園に残している。
2年生左腕エース・王の存在もあり、第29回大会にして、センバツの紫紺の優勝旗が初めて「箱根の山」を越え、東京勢初優勝をもたらした。その後、東京勢では日大三、日大桜丘、岩倉、帝京が優勝しているが、帝京の1992年が最後となっている。昨年秋の東京都大会では、左腕エース中村 心大投手(2年)を中心に準優勝した「早実」。優勝した二松学舎大付とともに、名門復活で東京に最高の「春」を届ける。