1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。

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 昨夏甲子園優勝の京都国際・小牧 憲継監督をはじめ、仙台育英・須江 航監督、作新学院・小針 崇宏監督らに共通するのが1983生まれであること。ほかにも元横浜監督で、現在は彩星工科の指揮官でもある平田 徹監督など名のある指導者が揃う”83年世代”だが、山形の強豪・酒田南もその1つである。

 春夏合わせて11回の甲子園出場。OBを見渡しても、元ソフトバンク・長谷川 勇也外野手をはじめとしたプロ野球選手も卒業しているチームである。そこでチームを引っ張っているのが、2020年1月から指揮官に就任した北川 泰俊監督だ。

「いろんな話とかして、刺激をしあっています」と全国にいる同世代の監督たちの活躍に刺激を受けながらも、こんなことを感じているという。

「思いきりの良さも大事なのかなと。言われたことだけをやるんじゃなくて、自分でちゃんと目配り、気配りをしっかりできれば、野球にもつながってくると感じますね」

 チームはこの秋、準々決勝で鶴岡東に3対7で敗戦。けが人が多く、ベストメンバーで戦えずに公式戦を終えたことや、部員数が例年より少なかったことから、「腕立てとか腹筋とか、自重でやるトレーニングを全員でやっています」と北川監督は話す。

 ただし体力強化だけでは春以降の躍進はない。

「言われたことだけではなく、自分で考えて行動する。仲間同士で指摘することも大切だと思うので、選手たちにはもっと周りにアンテナを張ってほしいなって感じています。そこには最終的な目標である甲子園というのが一番なんですが、人間的な成長も関係しています。

 人としての成長も大事にしながら指導をしているんですが、選手を見ていると、普段使っているスマートフォン1つでコミュニケーション出来たり、調べたり、色んなことが出来てしまう。でもどこか寂しさがあって、なんか違うと思うんです。だからこそ、時折厳しく接することもありますが、選手との会話を大切にしています」

 もちろん、言葉には気を付ける。「昭和みたいなことを言うとんねん、って感じるかもしれない」ようなことでも、北川監督は口酸っぱく伝え続けている。

 重点的に取り組んでいる自重を使ったトレーニングを通じて、「精神的にはしんどいけど、継続してへこたれずに成長すれば、芯の強い選手になると思う」と、どこか楽しみにしている。

 事実、秋はケガの影響で満足なパフォーマンスを発揮できなかった佐藤 丈投手(2年)、さらに山中 一輝投手(2年)も成長が見られるという。

 山中に関してはベンチにも入れなかった。実力的には主力級だったが、コンディション不良でベンチを外れた。「不甲斐なさと迷惑をかけていることで責任を感じているんだと思います」。

 二人の「春こそは」という熱量がチームに伝わり、充実の冬場を過ごせているようだ。

 酒田南がどんな野球を展開するのか。今後の戦いを注視したい。