1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。
*************
2025年も熱戦が期待される兵庫県。神宮大会でベスト4に入り、センバツでも優勝候補の1つに数えられる東洋大姫路に全国区の名門・報徳学園、秋4強・神戸国際大付など力のあるチームが多い。
滝川二もそんな学校の1つだ。しかし、夏はベスト8まで勝ち上がったものの、秋は2回戦敗退。指揮官・塚本 泰成監督は「夏からメンバーがほぼ総入れ替えになったなかでチームの経験値が足りなかった」と振り返る。
「特に夏はロースコアの試合展開が常に考えられるんですが、今年は新チーム発足時から接戦を落とすケースが多かったです。何が何でも接戦をものにしないと勝ち上がることはできません」
とはいえ「秋の時期に公式戦で接戦を経験できたことは大きかった。チーム全体が時間を重ねるにつれて、苦手こともやらないと勝てないことを認識して向き合えている」と塚本監督は手ごたえを感じている。
特に旧チームから経験がある187センチの大型スラッガー・村上 晴太郎外野手(2年)は「背中だけではなく、言葉でもチームを動かそうとしている」とプレー以外の面も評価。上級生としての責任と自覚をもって、春先は活躍が期待される。
また主将である新田 雄治郎捕手(2年)については「キャプテンシーがとてつもない」と太鼓判。特にチームを鼓舞したり、まとめたりする力を評価しており、村上とともに春以降のキーマンになってくるのは間違いなさそうだ。
そんな塚本監督だが、昨年監督に就任したばかりの26歳。これまで監督代行、部長という立ち位置でチームに携わりながら経験を積み、2024年春から正式に監督に就任した。
監督して結果を出すため。そして選手たちを育てるため、監督として「質問や発問を重視した会話を意識している」という。
「年齢も近いので対話をするようにしています。授業のように一方的ではなく対話をすることを意識しています。
そのためには自分の中でたくさんの引き出しがなければ、いろんなことを教えることが出来ません。つねに自分がアップデートしないといけない。体づくりなど手探りのところがありますし、選手たちの技術をどう上げていけばいいのか、さまざまな情報を収集しています」
「話す」ことだけでなく、「書く」ことも塚本監督は重視している。
「選手それぞれが、自分をどうアップデートしているか、振り返るために、野球ノートを書くようにしました。他にも週1回小論文を書いて、自己表現することを大切しています。具体的に表現できる選手は責任が芽生えますし、そのおかげで成長曲線も変わっている。
もっと先のことを言えば、そういう部分を養わないと、社会に出たときに置いてきぼりになってしまいますから。とにかく目標を決めること。そして自己分析をしっかりしてもらって、そこから目標達成のために動いていくようにしています」
こうした取り組みのおかげもあり、野球を継続する、しないにかかわらず、卒業する3年生は年が明ける前には進路が確定する。継続選手は関西学院大、国学院大、仙台大など全国各地の強豪大学に進学が決まっている。
また練習では、「何か1つ練習をやる際、1から10まで指導者が言ったことをやれ、というわけではなく、7くらいまで伝えるんですけど、残りの3割は自分たちで考えてできる練習にしている」ということで、自分たちの意識次第で追い込めるようにしている。
監督2年目となる2025年、塚本監督は「突出したものはあまりない」と前置きしつつも、勝ち上がれるだけの自信はある。
「1人1人が束になって戦えば、十分接戦をものにできる精神面がある。しぶとさも身についてきたので、そこを強みにして臨みたいと思います」
まだ就任2年目。青年監督の道のりはこれからだが、近いうちに滝川二が再び甲子園に出場する瞬間を、そして今の取り組みが間違っていなかったと証明される瞬間を心待ちにしたい。