1月24日、センバツ大会出場校32校が発表され、いよいよ高校野球も春を迎えようとしている。一方、センバツ切符を逃した学校は、昨秋の悔しさをバネに日々練習に励んでいる。「一冬越えれば化ける」とも言われるこの期間。春、夏でリベンジに燃える球児たちは、どんな成長を遂げているのか。全国各地で巻き返しを誓う学校の「今」を指揮官の言葉からひも解く。

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 今回のセンバツには、春夏通じて甲子園初出場となるエナジックスポーツをはじめ、4チームが一般枠として九州地区から選出。彼らに一歩及ばなかったのが龍谷だ。

 佐賀王者として九州大会に乗り込んだが、九州大会は初戦の柳ケ浦を前に3対5で敗戦。2015年以来となる甲子園出場は叶わなかった。

 そんなチームに大きな転機となる試合があった。昨春、招待試合で名門・横浜と対戦したことだ。その試合に関して、龍谷の指揮官・徳山 誠一朗監督は、こう振り返る。

「1試合だけでしたけど、1対6で負けたんです。でも抑えることもできているので、『いける時はいけるんだ』と自信を持つことができました。

 そのときは織田(翔希)くんが先発だったんです。正直、『1年生がこんなボールを投げられるのか』と思いましたし、『上には上がいるな』と学ぶところがありました。また、1つ1つのプレーから甲子園を見据えて、全国で勝つにはどうするか。そうしたところから伝わる気迫というか、風格が凄いと思いました。横浜はやっぱり野球を中心に高校生活を送れているんだと感じましたね」

 名門の佇まい、そしてプレーに刺激をもらった徳山監督、そして選手たち。そのおかげもあってか、秋季大会で佐賀県の王者になった。センバツには届かなかったが、1つ結果を残した。春以降も躍進が期待されるが、徳山監督の気を引き締める。

「春は正直、うまくいかないのではないか、思っています。秋に勝てたのはエースが好投して、日替わりでヒーローがたまたま出てくれたからです。もっといえば、新人戦は初戦敗退をしている。強いチームではないですし、春は追われる立場になりますが、秋のような戦い方を続けるのは簡単ではない。

 選手たちにも同じ話をしますし、『現状維持は衰退だよ』だったり、『本当の力が春、そして夏にわかると思う』と言葉をかけます。とにかく日々の積み重ねを絶対に怠らないようにしています」

 そうした中で成長してきたのが、秋の躍進を支えたエース・勝間田 莉音投手(2年)。

 九州大会で140キロを計測したが、武器は、高い制球力と多彩な変化球でゲームを作れるところにある。球速、球威が出てくれば、春も十分期待ができる。2番手以降の投手陣も、「横浜の時に好投してくれた」と期待する右サイドハンド・右近 鼓太郎投手(1年)など、楽しみな選手がそろっているという。

 また野手陣では、「ショートの副主将・松岡(奨真)が仲間に指導してリーダーシップが芽生えたり、主砲・松尾(朱莉)がチームの雰囲気を作ったりと、新たな一面が出てきた」と徳山監督は話す。松岡、松尾、そしてチームをまとめる主将・西 琉杏内野手(2年)がチームを引っ張れば「春は面白くなると思います」と期待を寄せていた。

 12月中に体づくりに力を注ぎ、1月から基礎の見直しをしながら、個々のレベルを上げてきた。時折、「合わせるためにやりますが、そこで責任をもって合わせられないと、全体が合わない」と全体でのシートノックをやる機会を作ることで、危機感を与えているという。

 秋の王者が、再びチャレンジャー精神で迎える春。

「相手に嫌だなと思ってもらえるような攻撃、一打二進の打撃、走塁はしたいですし、守備は粘り強く戦えたらと思います。覚悟を決めて、練習に取り組んだ選手が良い思いをすると思うので、そんな選手を増やせるような雰囲気を作りたい」

 と話して徳山監督は決意を語った。

 春は秋の結果が本物だったのか、その証明となる戦いだ。再び上位進出を果たし、集大成の夏へ繋げられるか。