2月も終盤となりオープン戦が開幕した。練習試合を含めたこの時期の実戦は若手選手にとって大きなアピールチャンスだ。なかでも育成契約の選手たちは開幕前の支配下登録へ向けて、期するものがあるだろう。

 だが支配下登録人数に空きがなければ、どれだけ好成績を残したとしても支配下登録されることはない。このオフにこんな事例があった。

 広島がオリックスにFA移籍した九里 亜蓮(岡山理大付)の補償を金銭のみにしたのである。その際、広島の鈴木球団本部長は、「より戦力になる外国人を探そうという方針。(育成選手の)モチベーションも考えて枠を確保しておきたい」とコメントした。その時点で広島の支配下登録人数は68名であり、上限の70名まではあと2名しか空きがなかった。シーズン中のアクシデントや育成選手のモチベーションを考えると、人的補償を獲得し上限まで1名にするのは大きなリスクと捉えたようだ。

 では広島以外の球団は支配下枠に空きはあるのだろうか。2月24日時点における各球団の支配下登録人数と育成選手の人数を調査した。

 12球団でもっとも支配下登録人数が少ないのは巨人で62名。最多は広島、ロッテ、楽天の3球団で68名だった。一方で育成選手の人数はソフトバンクの54名が最多。以下、巨人の42名、そして西武の30名と続き、最少は楽天の9名だった。楽天は支配下登録人数こそ多いものの、育成選手の人数も少なくチャンスは少なくない。

 人数ではなく割合で見るとどうだろうか。(支配下の空き/育成選手)とした計算を行ってみた。現時点ではヤクルトが育成選手12人に対して支配下の空きが6枠。最大50%が支配下登録される可能性を秘めている。ただし支配下登録はされていないがアビラ投手を既に獲得済みで実質的な空きは5名。それでも(5/12)で41.7%となり、12球団トップの数字を誇る。楽天は22.2%で上から6番目。ちょうど真ん中付近だった。

 気になるのは大所帯のソフトバンクだろう。ソフトバンクは育成54名に対して空きは5名。割合にして9.5%であり、これは12球団でもっとも割合が低い。ちなみにソフトバンクにつぐ大所帯である巨人は19.0%で8位。西武は20.0%で7位だった。

 特にソフトバンクと巨人は育成ドラフトで大量指名を毎年のように行っているが、支配下登録されるまでには相当な競争が待ち受けているのである。たしかに狭き門なのは間違いないが、そのなかから千賀 滉大蒲郡)や甲斐 拓也楊志館)、周東 佑京東農大二)ら侍ジャパン入りした選手も誕生した。チーム内の競争は大変だが、日本代表クラスになる可能性も秘めていると言える。

支配下枠の空き数やチーム編成の事情によって昇格へのハードルは大きく変わるが、どのチームにもシーズンを通じて“抜擢”のチャンスが巡ってくる可能性はある。限られた枠をめぐる育成選手の熾烈な競争が、新たなスターの発掘やチーム力の底上げをもたらすかもしれない。刻々と変わる状況を見据えながら、最後まで支配下登録という“夢”を追い続ける育成選手の姿に今季も注目したい。

【各球団の支配下人数、育成選手の人数、育成選手と支配下の空きの割合】

1 2