今シーズンからドジャースに加わった佐々木 朗希投手(大船渡)が、現地2月25日に行われたホワイトソックス戦(練習試合)に登板した。先頭打者に一発を浴びるなど、打者10人に対して2安打2四球1奪三振1失点の内容だった。まだ2月ということもあり万全の仕上がりではないものの、登板が内定している3月19日の開幕第2戦(カブス戦)へ向けて、故障なく対外試合初登板を終えた点は大きいと言える。
さて、そんな佐々木はルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人王)の筆頭候補でもあるわけだが、乗り越えなければいけないことはたくさんある。
まず1つ目が言語の壁だ。通訳がついているとはいえ、バッテリーや日本人以外のチームメート、首脳陣との会話はすべて英語。もちろん私生活でもそれは同様だ。伝えたいことを伝えられない、あるいは伝えられたことの細かいニュアンスが理解できない、そういったリスクがある。しかし、ここまでの報道を見ると通訳なしでチームメートと会話している場面もあり、先発ローテーション投手のグラスノーは「彼(佐々木)の英語は大丈夫だ。感心した」とコメント。多少のリップサービスはあるにせよ、全く話せないということはなさそうだ。言語の壁は早々に打ち破るかもしれない。
次に懸念されるのが過密日程による疲労だ。NPBはほぼ月曜日に試合がなく6連戦を基本としてシーズンを消化していく。月曜日が祝日の場合に7連戦や9連戦などが組まれることはあるものの、10連戦を超える大型連戦はシーズン終盤に雨天中止の振替が入った場合だけだった。
一方、今シーズンのドジャースの日程を見ると開幕直後こそ6連戦が最大だが、5月には10連戦、5月末から13連戦があり6月は3日しか休養日がない。7月はオールスターブレイクがあるため比較的休養は多いが、8月、9月も6月と同様に連戦が続き、雨天中止があれば、ダブルヘッダーも加わってくる。またインターリーグを含め他地区とのビジターゲームでは移動距離が長く、当然時間もかかってくる。日本では経験できなかった時差も含め、NPB時代とは比べ物にならないハードなスケジュールだ。先発投手のため毎日試合に出るわけではないが、MLBではいわゆる”あがり”はなく先発しない日でも基本的にはベンチに入る。体力的な面で乗り越えなければならないハードルは高い。
3つ目は体力面。MLBではNPBと異なり中4日や中5日でローテーションを回していくことになる。ドジャースに関しては中5日が基本線となり、NPBではやそれ以上の間隔で投げていた佐々木が、そのローテーションに耐えられるかもわからない。
もちろんロバーツ監督を始めとしたドジャース首脳陣も最初から無理はさせないだろうが、中6日以上の間隔で開幕からシーズン終了まで回ることは難しい。中5日での対応ができない場合、マイナーオプションを用いて登板間隔の調整を行うこともありそうだ。
最後に待ち受けるのが強力・ドジャース投手陣との競争だ。現時点で開幕第2戦が内定しているとはいえ、シーズンを通してローテーションが確約されているわけではない。山本 由伸投手(都城)にブレイク・スネル、タイラー・グラスノー、そして復帰する大谷 翔平選手(花巻東)とトニー・ゴンソリン、その他にもボビー・ミラー、ランドン・ナック、ベン・カスパーリウスなどローテーションに入ってきてもおかしくない投手は複数いる。彼らとの争いを制する必要がある。
このように佐々木の前に立ちはだかる数々の壁がある。これらの壁を薙ぎ払い2年連続のワールドシリーズ制覇に貢献し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝くことを期待したい。