追立と永田は16年夏、樟南との延長15回引き分け再試合の末、敗れて以来、9年ぶりとなる平和リース球場だった。「大分からのバスの中から、楽しみで、ワクワクしていた」と言う。

 コーチ2年目の追立。「あの試合のことはその後もいろんな人から言われます(笑)。あの試合で勝っていたら、多分野球は続けていなかった」と苦笑する。あそこで負けた悔しさが野球を続ける原点であり、人生のターニングポイントになった。

 チームとしてはリーグ3戦目にしてようやく打撃が上がってきたことに手応えを感じた。1番・安藤駿(鶴崎工)は長打を売りにしている選手だが、俊足を買ってのリードオフマン起用。この日は初打席でセーフティーバントを決めたことで相手を揺さぶり、2打席目に特大3ランを放って勢いづけた。それぞれの野手が「受け身にならず、初球から積極的に振れるようになった」ことはシーズンに向けての良い兆しだ。

 昨年7月、永田をチームのマネジャー兼野手コーチとしてチームに招へいしたのが高校の同級生の追立だ。九州の社会人の勢力図を見れば、西部ガス、ホンダ熊本など強豪の壁を破れず、日鉄九州大分は都市対抗、日本選手権の全国大会に出場できていない。高校時代に「勝つことへのこだわり」を散々叩き込まれた同級生に白羽の矢を立てた。

 「負け癖がついているチーム」と永田は率直に言う。高校時代からプレーヤーよりもマネジャー経験が長い永田だが、本当に勝つことを目指すチームの選手たちの本気度を知っている。

 この試合は韓国プロに完勝だったが「ここで勝つことが目的ではない」。安打も得点も出たが、「まだまだ点をとれる場面があった」。九州を勝ち抜いて全国大会に出るためには、安藤がセーフティーバントで揺さぶったような工夫を、もっとしていく必要がある。

 これまでフルタイム仕事をして夕方5時からの練習だったが、今季からは午前中仕事で午後練習、長期遠征も会社から支援してもらえるようになった。それだけに「結果を出さなければいけない」気持ちは強い。新たに生まれ変わる日鉄九州大分。元鹿児島球児たちがその「起爆剤」になる!