音楽プロデューサーとしてCHEMISTRYやいきものがかりの結成、デビューなどで手腕を発揮する一方で、半世紀を超えるアマチュア野球観戦により野球の目利きでもある一志順夫。連載コラム「白球交差点」は、彼独自のエンタメ視点で過去と現在の野球シーンとその時代を縦横無尽に活写していきます。

1994年生まれの「大谷世代」は開幕戦の2人をどのように受け止めるか

 ドジャースvsカブスの開幕戦が近づき、否が応にも日本人対決の話題が随所で盛り上がってきた。主役はもちろん大谷 翔平花巻東)であるが、その影に隠れながらMLBでは成功事例の少ない野手として安定した実績を残している鈴木 誠也二松学舎大付)にも熱い視線を送りたい。

 この2人は1994年生まれの同級生、いわゆる「大谷世代」の2トップだ。2012年のドラフトでは、大谷が日本ハムからドラフト1位単独指名、鈴木は広島から2位指名を受けた。鈴木は都を代表する速球派投手として名を馳せていた。下馬評では4位以下で指名されるレベルとみられていたが、直前になり他チームが上位指名を匂わせたことから広島は慌てて指名順位を繰り上げたという。この時の広島の1位が同じ野手の高橋 大樹龍谷大平安)。その後の2人の野球人生を鑑みると因果を感じざるを得ない。

 この年、高校時代からの大谷のライバル、藤浪 晋太郎大阪桐蔭)は阪神1位、同時期に甲子園を沸かせた北條 史也田村 龍弘(ともに光星学院=現八戸学院光星)もそれぞれプロの門を叩くこととなった。藤浪とともにBIG3と称された中日1位指名の濱田 達郎愛工大名電)は怪我に苦しみ通算5勝、サウスポーとしてはそれ以上の将来性を期待された楽天1位森 雄大東福岡)も制球難を克服できず、やはり最後は故障に泣き球界から去っていった。

そもそも筆者は野球に限らず、同世代同期の横軸の相関から派生する物語というものに格別の感興を覚える。

作家でいえば三島 由紀夫と吉行 淳之介。

ミュージシャンでいえば桑田 佳祐と佐野 元春。

昭和のプロ野球でいえば長嶋 茂雄と杉浦 忠。

 追いかけても追いつかない存在に複雑な感情を抱くケース、あるいはジャンルやスタイルの違いを盾に敢えて交錯を避けるケース、はなからその才能差に諦念しリスペクトの対象にしてしまうケース、色々ある。今、大谷、鈴木と同時代を共生、共闘してきた同期生たちはそれぞれどういう思いを抱いて来たる開幕戦に臨むのか、その心の窓を覗いてみたいものだ。

「大谷世代」は大谷が突出し「松坂世代」に比べて存在感の薄い印象

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