「大谷世代」は大谷が突出し「松坂世代」に比べて存在感の薄い印象
史実をみても、〇〇世代の元祖は「松坂世代」ということに異論はなかろう。高校時代における松坂 大輔(横浜、西武他)が人気実力ともに突出した存在だったのは、1998年選抜大会で他校球児が松坂のサインを求めて列をなし、記念撮影をしていた映像からも推察できる。とはいえ、その後の「松坂世代」は昨年まで現役をまっとうした和田 毅(浜田、ソフトバンク他)を筆頭に、杉内 俊哉(鹿児島実、巨人他)、藤川 球児(高知商、阪神他)、新垣 渚(沖縄水産、ヤクルト他)、村田 修一(東福岡、巨人他)など多士済々で、それなりの結果と成績を残した選手が多かった印象が強い。
それと比較して、今季で高卒では13年目、大卒では9年目を迎える「大谷世代」の選手はどうであろうか? 海外組の藤浪と鈴木を除きNPBで現役続行しているのは、投手では柳 裕也(横浜、中日)、星 知弥(宇都宮工、ヤクルト)、弓削 隼人(佐野日大、楽天)、池田 隆英(創価、日本ハム)、田中 正義(創価、日本ハム)、黒木 優太(橘学苑、西武)、瀧中 瞭太(高島、楽天)、澤田 圭佑(大阪桐蔭、ロッテ)、田村 伊知郎(報徳学園、西武)、小野 泰己(折尾愛真、オリックス)、矢崎 拓也(慶応、ヤクルト)、濵口 遥大(三養基、ソフトバンク)、畠 世周(近大福山、阪神)、佐々木 千隼(日野、DeNA)、生田目 翼(水戸工、日本ハム)、齋藤 友貴哉(山形中央、日本ハム)、床田 寛樹(箕面学園、広島)、坂本 光士郎(如水館、ロッテ)、野手では田村 龍弘(ロッテ)、京田 陽太(青森山田、DeNA)、石井 一成(作新学院、日本ハム)、長坂 拳弥(健大高崎、阪神)、近本 光司(社、阪神)、山野辺 翔(桐蔭学園、西武)、大山 悠輔(つくば秀英、阪神)、木浪 聖也(青森山田、阪神)、吉川 尚輝(中京、巨人)、田中 和基(西南学院、楽天)、佐野 恵太(広陵、DeNA)、西川 龍馬(敦賀気比、オリックス)、松原 聖弥(仙台育英、西武)の計31人(オイシックスの笠原 祥太郎(新津)を含めると32人)。このうち1軍の主力選手として活躍、戦力になっているのは厳しくみると柳、田中、床田、近本、大山、吉川、佐野、西川くらいか。生き馬の目を抜くような競争社会の権化ともいえるプロ野球界で、このサバイバルの確率が特別に高いかどうかは判然としないが、同世代の中では、松坂以上に他を寄せつけない大谷の圧倒的な存在感が際立っていることだけは間違いなさそうだ。
上述の同期生のうち、高校時代からドラフト候補に挙がりアマチュア野球ファンに知られていたのは、柳、星、澤田、両田村、石井あたり、田中、近本、大山は大学進学後に成長、注目されたタイプである。佐野に至っては、広陵から明治大を通じ専門誌にもほとんど名前が登場することはなく、その意味では世代一番の「万馬券」だったと言えよう。ちなみに柳と星と佐野は明治大、澤田と田村伊知郎と田中和基は立教大、池田と田中正義は創価〜創価大で切磋琢磨してきたチームメイト。こうした同期が織りなす綾も観賞ポイントの一つだったりする。
引退組でそこそこの爪痕を残せたのは、2015年に中日で10勝を挙げた若松 駿太(祐誠)、2016年に阪神で122試合出場した北條、2019年に中日の開幕投手を務めた笠原の3人か。相内 誠(千葉国際=現・翔凜、元西武)や柿澤 貴裕(神村学園、元巨人)のように不祥事をきっかけに消えた選手もいる中、辛うじて1軍のゲームに出場経験のある選手はまだ相対的には幸せだったかもしれない。
高校時代から注目されつつも、様々な理由でプロ入りのチャンスを逃したのは、神原 友(東海大甲府)、竹石 智弥(新潟明訓)、竹内 諒(松阪)、高橋 拓巳(前橋育英)、谷中 文哉(盈進)、佐藤 拓也(浦和学院)、城間 竜兵(光星学院=現・八戸学院光星)、笹川 晃平(浦和学院)、田端 良基(大阪桐蔭)、萩原 英之(九州学院)、金子 凌也(日大三)、中澤 彰太(静岡)ら。社会人時代(日本生命)の高橋などは、中継ぎなら即戦力ですぐ使えそうだと思っていたにもかかわらず、まさかの指名漏れで遂にプロ入りの夢は叶わなかった。このうち現役は神原と中澤のみ。30歳はプロ野球選手としては中堅、脂の乗り切った頃合いではあるが、社会人野球では悲しいかな引き際を迫られ第二の人生を歩まざるを得ないタイミングになる。
最後に参考までに2012年大谷世代のU-18メンバーを記しておく。
[投手]
大谷 翔平(花巻東)
岡野 祐一郎(聖光学院)
佐藤 拓也(浦和学院)
神原 友(東海大甲府)
濱田 達郎(愛工大名電)
藤浪 晋太郎(大阪桐蔭)
大塚 尚仁(九州学院)
[捕手]
田村 龍弘(光星学院=現・八戸学院光星)
中道 勝士(智弁学園)
森 友哉(大阪桐蔭)
[内野手]
菅原 拓那(常総学院)
田端 良基(大阪桐蔭)
城間 竜兵 (光星学院=現・八戸学院光星)
伊與田 一起(明徳義塾)
北條 史也(光星学院=現・八戸学院光星)
金子 凌也(日大三)
[外野手]
呉屋 良拓(浦添商)
笹川 晃平(浦和学院)
高橋 大樹(龍谷大平安)
水本 弦(大阪桐蔭)
※森 友哉のみ2年、他の選手は3年