3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会。154キロ右腕・石垣 元気投手(健大高崎)に並ぶ大会屈指の右腕に挙げられるのが東洋大姫路の阪下 漣(2年)だ。

 最速147キロのストレートに縦、横のスライダー、カットボール、カーブを駆使する右腕。抜群の制球力と巧みな投球術を武器に昨秋の公式戦では、86.2回を投げ、自責点8で防御率0.83。9試合で6完投、3完封。さらに近畿大会・神宮大会のBB率(168打者で5四球)がわずか3%。そんな阪下はこの2年間でここまでの投手へ成長したのか。

「体作り」で一気にスケールアップ

「自分は西宮市出身ということもあって、甲子園球場というのは近くて遠い存在って思っていたんですけど、センバツ出場が発表されて、素直に今は嬉しい気持ちでいっぱいです」

 現在の心境をこう語った阪下。実家から甲子園は近く、現地で試合を観ることもあった。特に印象に残っているのが、2019年夏の決勝である履正社対星稜の試合。そこで岡田龍生監督の優勝インタビューに感銘を受けた。

 中学時代は兵庫西宮ボーイズでプレー。中学3年生の時点で最速は129キロと決して速球派ではなかったが、当時から制球力に優れており、ボーイズの関西選抜に選ばれるほどの投手だった。

 そこで、東洋大姫路の監督に転身していた岡田監督から声がかかり、「レベルの高い選手 が揃っている」という説明を受ける。それを聞いて、「素晴らしい環境もありますし、岡田先生の下で3年間やって、甲子園を目指そうと東洋大姫路を選びました」と進学を決めた。

 東洋大姫路では1年春からベンチ入りして、秋からエースとなる。この2年間で最も変わったのが体つきだ。寮生活を始めてから白米を食べる量を増やし、体重は入学時の70キロから88キロに増加。それに伴って球速も上がり、球威のある球を投げられるようになった。彼の取り組む姿勢は岡田監督も高く評価している。

「意識が高いので、自分でも体作りをしてきたし、成長曲線が急激に上がっているんじゃないですかね。毎日やらされている感じがあると、そこまで力が急激についてこないんですが、自分でやっていると、一気にドーンと伸びるタイミングはあるんですよね」

本人の中ではどこかで急激に伸びたというよりは、食事やウエイトトレーニングといった地道な鍛錬の積み重ねが成長に繋がっていると感じているようだ。それが結果として実ったのが今秋。特に90球で完封した近畿大会準々決勝の大阪学院大戦は「一番自分らしさを出したピッチングができた」と語る快投だった。

「たくさんピンチもあって、ヒットも打たれたんですけど、打たせて取るピッチングができました。ピンチの時はギアを一つ上げて厳しいところに投げられた結果、90球でマダックスと結果に繋がったと思います。大阪学院大戦というのは、高校に入ってから一番自分の中で納得いくピッチングができたと思います」

少ない球数で完封できるのは優れた制球力があるからこそ。投手を始めた頃からコントロールに苦しんだ経験はないという。右投手は左打者を苦手にすることもあるが、阪下にはそういったことはない。「インコースに厳しく投げられる」と打者の左右に関係なく内角を突く投球ができているからこそ、左打者にもきっちり抑えることができている。

一番悔しかった昨秋の横浜戦

1 2