この春、東京の強豪中学野球チーム・稲城シニアから全国各地の名門へ多くの選手が進学することとなった。

 チームは昨秋のドラフトで日本ハムからドラフト5位指名を受けた山縣 秀内野手(早大学院早稲田大)、大阪桐蔭でエースとして活躍し、明治大に進学が決まった平嶋 桂知投手ら好選手を輩出している。南多摩の河川敷にグラウンドを構える強豪シニアから飛躍を目指す未来のスター候補に迫った。

 主にクリーンアップを任された鈴木 穰内野手は、22年夏の甲子園を制した仙台育英(宮城)に進学する。U-15日本代表にも選出された左のスラッガーは、打撃練習でもひと際強烈な打球を飛ばしていた。

 稲城シニアでは「バッティング練習の時間を多く取ってくれるので、パワーも付きました」と自慢の打撃に磨きをかけた。素振りの練習で1.5キロのバットと600グラムのバットを使い分け、スイングの強化を図ったことで、「体重が増えてからは、打球のインパクトが強くなって打球が早くなった」と成長を実感している。

 いよいよ始まる新生活。まずは全国屈指の強豪でレギュラー奪取に燃えている。

「打撃だけでなく、守備もできないと信頼されないと思う。バッティングも磨きつつ守備・走塁もレベルアップしていかなければいけないです」

「高校通算50発」の目標を掲げた大砲候補に注目だ。

 また、最速140キロの直球に変化の大きいカーブが魅力の小寺 開唯投手は、神奈川の名門・東海大相模へと進む。

 進学を決めた理由を問われると「去年の甲子園でも藤田 琉生投手(現・日本ハム)や福田 拓翔投手(新3年)を見て、自分もこういう風になりたいなと思いました」と聖地での活躍に刺激を受けたと言う。さらには「2015年に甲子園優勝をしていたり、文武両道でスポーツだけに偏らず勉強面も充実したりしていて、どの部活もいい成績を残していたので進学先に選びました」と続け、野球部以外の環境面についても触れていた。

 アピールポイントは「どんなピンチの場面でも自信を持って相手と勝負できること」。高校での目標は「高2からベンチ入りして甲子園に出たい」と話し、「横浜をはじめ多くの強豪校がいる神奈川県でトップに立ち、自分の目標である150キロを投げられるように頑張りたいです」と語った。

 50m6.6秒の脚力が自慢の西田 蓮捕手は、聖光学院(福島)へ入学が決まった。学校の徒競走では常に1位というスピードスターは、「高校のスローガンでもある『不動心』に惹かれました。実力よりも心で戦うという言葉が響いて決めました」と進学の背景を説明した。中学野球を引退した夏以降、内野手にも挑戦し、練習で軽快な動きを見せていた。高校でも内野手での出場に意欲を見せており、「ショートのレギュラーとして、甲子園に行きたいです」と意気込んでいた。

 同じ東北の強豪・青森山田(青森)に進学する北澤 誓弥内野手は、「内野はどこでも守れます」という堅実な守備が特徴だ。「去年のセンバツをテレビで見て、ベンチに映っていた選手の雰囲気や、見学にいった際の和気あいあいとした姿に迫力と魅力を感じました」と、4月からの生活に期待を膨らませる。高校3年間で甲子園優勝を目標に掲げ、「守備もバッティングも何でもできる選手。ユーティリティプレイヤーになりたいです」とチームへの貢献を誓っていた。

 チームの主将を務めた新井 陸仁外野手は、50m6.7秒の脚力と守備範囲が武器。身長185センチ、体重80キロと体格にも恵まれ、主に「1番・センター」として打線の切込み役を担った。4月からは関西の強豪へと進むが、「逆方向に強い打球を打つことが得意なのでそこをアピールしたい」と話していた。

 それぞれの道を歩む稲城シニアの選手たち。高校野球でのさらなる飛躍に期待したい。