広島のドラフト2位・佐藤 柳之介投手(東陵ー富士大)が、開幕ローテーション入りに向けアピールを続けている。1軍キャンプを完走し、3月1日には楽天戦でオープン戦初登板初先発。初回、四球を機に1点を失うも、二回以降は屈指の好打者・辰己 涼介外野手(社ー立命館大)を2打席連続三振に斬るなど持ち味を発揮し、3回2安打1失点にまとめた。昨年7月の段階では「今のままではプロに行けたとしても通用しない」と自己分析していた左腕は、「即戦力」の活躍を見せることができるか。
全国で結果を出しても“天狗”にならなかった富士大時代
「謙虚」――。筆者が佐藤に対して抱くイメージだ。
初めて取材したのは2023年10月、弘前はるか夢球場。当時富士大の3年生だった佐藤は明治神宮野球大会出場をかけた東北地区大学野球代表決定戦初戦の東北福祉大戦に先発し、7回3安打無四球11奪三振無失点と好投した。
佐藤は試合後、「できすぎです。リーグ戦では野手に迷惑をかけたので、リーグ戦が終わってからずっと修正を続けてきました。結果を出せてよかったです」と安堵を口にした。この年は6月の全日本大学野球選手権で計11回無失点の快投を披露し、秋には北東北大学野球リーグ戦で最優秀防御率賞のタイトルを獲得。“天狗”になってもおかしくないが、その様子は微塵も感じられなかった。
初めての取材の10日後、富士大のグラウンドに足を運んで改めて話を聞いた。「この前の記事読みました。たくさん良い選手がいるのに今回も自分を取り上げていただいてありがとうございます」。佐藤は筆者を見つけるなり、そう声をかけてくれた。
数日前にドラフト会議が開催され、スポーツ紙には早速、翌年のドラフト上位候補として佐藤の名前が挙がっていた。そのことを本人に伝えると、「そうなんですか?全然そんな実感はないです」と驚いた表情を浮かべた。
富士大の同期はプロ志望が多く、最終的に佐藤を含む6人がプロ入りを果たした。逸材がひしめく環境に身を置いていたからこそ、自分を特別な存在だと認識していなかったのは事実なのだろう。