野球から離れたテーマでレポートを提出

 新たな試みとして、一切練習ができない自宅学習期間を「割り切って」、野球の練習からは離れた「テーマ」を設定した課題を出し、生徒たちに自由に取り組んでもらいました(レポート提出)。「中学時のチームへ現状報告」「大学キャンパス見学」「未経験の体験」がそのテーマです。中学生への現状報告で、先を行く高い意識で歩めているかを確認する。大学訪問で自分が歩むべき先を肌で感じる。新たな経験を通してこれまでと違った考え方が広がる。

 レポートの中身は、企業訪問、飛行機整備場、城跡、博物館、プロスポーツ見学等ユニークで興味深い内容でした。また、これと別日には、地元のマラソン大会に参加しました。様々な年齢層の方と交流したり、激励の言葉を頂いたり、とても刺激になったと思います。こうした様々な経験でギャップを感じる度に、自分をリフレームしていけるのだと思います。改めて現状に感謝したり、環境の活かし方を考えたり、野球への情熱が再燃したり、同じことに対してもこれまでとは違った姿勢で臨めるようになると思います。その変化こそが、自律であり、先を行く人間に近づく要素だと思います。直接的に上達させるわけではありませんが、野球に取り組む自分自身が向上することで、間接的に野球を上達させる要素になるはずです。平日の個人練習はもちろん、週末のグラウンドでの実戦練習や、シーズン明けの練習試合等から得られることが、自分たち次第で大きく変わります。余談ですが、優秀レポートをスタッフからの景品付きで表彰しました。

 本校の校祖は「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれ」という教育理念を掲げられました。130年以上も前、女性が教育を受けることが一般的でなかった時代に女子教育の必要性を唱え実践したことは、まさに「時代の先を行く」ことであったはずです。

 低反発バット、投球制限、タイブレーク、2部などが制導入され高校野球は変わりつつあり、今後は7イニング制が検討されるなど、加速度的に変化していく可能性もあります。古き悪しき習慣ばかりに焦点が当てられてしまいますが、これまでにも先進的な発想から高校球界を牽引した指導者やチームは間違いなく存在しました。高校野球や教育現場にとって、現時点での先進的な発想を持てているのかを常に自問し続けています。

 今年度は21世紀枠推薦校や選抜大会の補欠校に選出していただきましたが、聖地へたどり着けなかったことには何か意味があるはずです。新チーム発足以来、日に日に生徒たちの意識は高まりつつあります。淑徳高等学校硬式野球部関係者みんなの力を合わせて「進みゆく野球界の先を歩む」ことができるよう、「割り切り」を研ぎ澄ませていければと思います。

淑徳高等学校
硬式野球部
中倉祐一