第97回選抜高等学校野球大会の組み合わせ抽選会が行われた。
出場32校を見ると、投手力、打撃力、守備力など総合的に見て、Aクラスと呼べるのが、健大高崎(群馬)、横浜(神奈川)、東洋大姫路(兵庫)、智弁和歌山(和歌山)の4校ではないだろうか。
健大高崎、横浜、東洋大姫路は大会前から3強として評価されていたが、智弁和歌山は秋の成績、選手の個々のパフォーマンスを見ていくと、この3校に負けないチームだ。
*4項目の評価の目安
【打撃】A:大量得点に期待 B:ある程度の得点は期待 C:ロースコア覚悟
【投手】A:3人以上の頼れる投手がいる B:2人の先発投手がいる C:絶対的投手、あるいは頼れる投手が1人しかいない
【走塁】A:ワンヒットで還る走力を持ち、盗塁にも期待 B:判断ミスは少なくそつない走塁 C:判断ミスが多く、走れる選手も少ない
【守備】A:基礎能力が高く、連携プレーにもスキがない B:各野手の基礎能力が高い C:ミスが見られる
横浜
打撃B 投手A 走塁B 守備A
投手力の高さについては今大会NO.1だろう。チーム防御率0.43はダントツトップだ。大会注目投手に挙がる151キロ右腕・織田 翔希投手(2年)、146キロ左腕・奥村 頼人投手(3年)のほかにも、140キロ中盤の速球を投げ込む左腕・片山 大輔投手(3年)、リリーフとして安定感が高い前田 一葵投手、141キロ右腕・山脇 悠陽投手(3年)、投手に専念し、切れのある速球を投げ込む山本 正太郎投手(3年)の6投手がベンチ入りした。織田、奥村頼以外の投手陣が上手く機能すると、より盤石な戦いができそうだ。打線では1番の阿部 葉太外野手(3年)、4番・阿部 舜友内野手(2年)を中心に左の好打者が揃う。どの選手もミート力は高い。守備は内野守備が堅く、外野ではセンター・阿部が球際の強さを見せる。
秋は力量的に互角の相手になると、3〜4点にとどまった。こうした相手にも5点以上の得点が取れる野球ができると、優勝は大きく近づく。
健大高崎
打撃A 投手A 走塁B 守備B
世代NO.1右腕・石垣 元気投手(3年)、142キロ左腕・下重 賢慎投手(3年)の2枚看板は強力。勢いで押せる相手には石垣、左打者中心で戦術を多彩なチームには下重という使い方ができる。140キロ台の直球を投げる島田 大翔投手(3年)、技巧派左腕・山田 遼太投手(3年)の二人は、秋の大量リード時での登板はあったが、接戦時で投げた経験がないのが気がかり。勝ち進む中で、この2人が投げられるようになると大きい。打線は32校中、トップとなるチーム打率.390、6本塁打を記録した。特にスラッガー・秋山 潤琉内野手(3年)、強肩捕手・小堀 弘晴(3年)の成長が著しいものがあり、石田 雄星外野手(2年)など足が使える選手が揃う。初戦は試合巧者・明徳義塾と対戦する。
相当な苦戦が予想されるが、センバツ連覇を目指す健大高崎の選手たちが秋から課題にしてきた対応力が試される相手になるだろう。
東洋大姫路
打撃A 投手B 走塁B 守備A
岡田 龍生監督が率いる東洋大姫路は投打ともに順調な仕上がりを見せてきた。大会屈指右腕・阪下 漣投手は昨秋86.2回を投げ、自責点8で防御率0.83。抜群の安定感を発揮した。常時140キロ中盤の速球、スライダー、カットボールを駆使した投球の引き出しは広く、今大会も安定した投球が期待できる。優勝のためには、阪下があまり投げずに勝てる試合がほしい。その中で、142キロ左腕・末永 晄大投手(3年)の奮闘が期待される。この2人以外では大型右腕・城下 雄飛投手(3年)、137キロ左腕・松本 蒼生投手(3年)、143キロ右腕・木下 鷹大投手(3年)が控える。木下は昨秋はベンチ外だったが、昨春夏は背番号11でベンチ入りしており、公式戦に登板していた。木下の目処が立てば、投手運用は楽になる。
打線は近畿大会で4試合で29得点、明治神宮大会初戦の聖光学院相手に5回コールド勝ちを収めた。下級生から1番を務めた渡邊 拓雲内野手(2年)はバットコントロールも高く、軽快な走塁が持ち味で、3番見村 昊成外野手(3年)、下級生から主軸を打っていた白鳥 翔哉真外野手(3年)なども打撃力は高く、選球眼もよい。簡単には凡退しない怖さもあり、好投手相手にもしっかりと追い詰めることができる。
盤石な試合運びを見せて頂点を掴みたい。
智弁和歌山
打撃A 投手A 走塁B 守備B
智弁和歌山の選手層の厚さはこの3強に匹敵する。完成度の高い投球を見せる渡邉 颯人投手は140キロ前半の速球、多彩な変化球を投げて、公式戦7試合、43.2回を投げ、防御率0.82の好成績を残した。152キロ右腕・宮口 龍斗投手は6試合で13回を投げ、15奪三振、防御率0.00と短いイニングの登板だが、持ち味の剛速球を投げ込んでいる。183センチ87キロと体格もよく、プロ向きの素材だ。ほかには二刀流の奥雄大外野手(3年)は最速141キロ、田中 息吹投手(3年)は最速145キロをマークする。昨秋の公式戦防御率0.75は横浜に次ぐ全体2位の成績となっている。
高校通算17本塁打のスラッガー・福元 聖矢外野手(3年)は昨秋の近畿大会準決勝・市和歌山戦で2打席連続本塁打を放ち、スラッガーとしての素質が高い。他にも近畿大会で14打数8安打の活躍を見せた山田 凜虎捕手(2年)、俊足巧打の藤田 一波外野手(3年)など粒ぞろい。チーム打率.329を記録している。
近畿大会の試合を見ても、個々の能力の高さが際立っている。ただ、22年夏以降の甲子園3大会連続で初戦敗退が続いている。近畿大会の試合運びを見る限り、取りこぼしがなく、堅実に戦っている様子が見られた。初戦を乗り越えれば一気に化ける可能性は持っている。