社会人の強豪が復活する。2009年の休部から16年、日産自動車が野球部の活動を再開。この春から新人22選手を迎え、再始動している。
同部は広島で活躍し、侍ジャパンの内野守備走塁コーチを務めている梵 英心氏(三次=現・阪神ファーム打撃コーチ)や、DeNAで開幕投手を任された高崎 健太郎氏(鎮西)ら、多くのプロ野球選手を輩出した。都市対抗大会では全国制覇2度の実績を誇るが、一度休部状態となり名門の影は薄れていった。しかし、一昨年の9月に野球部が復活することを発表。現在も800億円の赤字を抱える状況だが、この春から正式に復活を遂げている。
そんな今回の復活劇で歓喜に沸くOBがいる。現ルーツベースボールアカデミー代表でMLBスカウトの養父 鐵氏だ。帝京三、亜細亜大を経て日産自動車に27歳まで所属。オリックスなどで活躍した川越 英隆氏(現・ソフトバンクコーディネーター(投手ファーム統括))、近鉄などでプレーした鷹野 史寿氏(現・楽天育成コーチ)ら同期の選手とともに腕を磨いた。かつての名門を支えていただけあり、出身チームの復活に喜びはひとしおだ。
「一度野球部がなくなって、社会人野球を復活させたいという日産の人たちの思いが強かったと思う。自分もOBとして寂しいことだったので、復活してくれて嬉しい気持ちが強い」
日産は経営難に苦しんでいるが、「こんな時代だからこそできることもある」と野球部の存在意義について熱く語る。「現役当時は、都市対抗に出た時も社内全体で応援するチームだった。今もその形が強いかも知れない」と、会社全体の再建に向けた足掛けになると期待をかけている。
一方で、課題も山積みだ。名門復活とは言ったものの、メンバーは新人22選手と負担も大きい。養父氏も「(復活は)そんな簡単なものじゃない」と語気を強める。
「現状、経験値の少ない大学卒業の選手が多く選手層は厚くない。伊藤 祐樹監督をはじめとした首脳陣がどれだけ選手を育てて”名門復活”と言えるところまでもっていけるかがこれからの課題だと思う」
スタートラインに立ったと同時に、待ち受ける試練も多い。人数も少ない中で、「選手たちが一丸となって、日産の復活に向け、新しい時代の中でプレーする必要がある」と、いかにして会社に貢献していくかがカギを握ると話していた。
「いくら名門とは言え、また一からのスタート。まずは自分たちが自分のやるべきことをしっかりとやって、勝つことによって日産自動車のためになると思う」と強豪復活に胸を躍らせる。「チームの輪を持って会社のために戦うということを前提に、一人ひとりが頑張って欲しい」と再起をかける選手にエールを送った。野球部の躍動が会社全体に大きな影響与えることに期待したい。