「人間力がないと技術は上達しない」

――そのほか、大きく成長した選手はいますか?

 井生監督 高瀬 永遠(内野手=3年)が成長した。考えて野球ができるようになった。打者なら、守備位置を見てセーフティーバントを試みたり、守備では打者によって、ポジションを少し変えることができるようになった。

――3番の山下 恩生外野手(3年)が昨秋福岡大会で高打率をマークしました

 井生監督 山下はパンチ力がついた。もともとコンタクト力があって、バット操作がうまい。さらに力強さが備わってきた。足も速いので、打ちながら走っていたけど、しっかり打ってから走りなさい、とアドバイスしてから、打てるようになってきた。

――独立リーグでのプレー後、育徳館の監督になった経緯を教えていただけますか?

 井生監督 明治学院大では社会科の教員免許をとっていたが、社会では難しいと思い、独立リーグが終わってから、九州共立大に2年通って、体育教員の免許を取得しました。その後2年は八幡工で副部長を務め、築城特別支援学校で1年勤めたのち、正式に教員に採用となって、2022年4月から育徳館に赴任し、1年目は副部長で、23年4月から監督ですね。

――指導者としてのモットーを聞かせてください

 井生監督 大学のときも、独立リーグのときも、自分でそう感じたんですが、技術は練習で必ず上手になるわけではなく、やはり人間力がないと技術は上達しないと思っている。社会人としての挨拶や礼儀とかが大事。生徒に言っているのは「高校野球で頑張ったとしても、その後の君たちの人生のなかでは、たった3年間のこと。甲子園にいったところで人生が変わることにならない。野球も大事だが、人間としてきちんとしないといけない。野球のフェアグラウンドは90度の世界だが、それ以外の270度の部分も、きちんとしないといけない。360度しっかりしないといけないよ」と教えてます。

――残念ながら21世紀枠の九州地区候補校にはなれませんでしたが、冬のテーマは何だったのですか?

 井生監督 福岡で準優勝したし、追われる立場になる。それに甘んじないよう、1人1人、個人が力を上げていく時期にした。とにかく目の前のことを一生懸命させるだけです。あとは攻撃の部分に力を入れた。総合的にレベルアップさせたいですね、守備も攻撃も。島も研究されてくると思うので、こちらもレベルアップしていかないといけない。

 とにかく熱い監督だ。練習中の指導する姿、インタビューしている時の口調からも、選手と真剣に向き合っていることが分かる。時には厳しい口調も飛び出すが、それも選手への「愛」の裏返し。ナインがその熱意に引っ張られて、その気になっていったことが分かった気がした。