「教え子たちがたくさんプロに進んでいます。特に広島、ロッテは集まっていますし、応援が楽しみです」

 そう喜びながら語るのが、鍛治舎巧氏だ。枚方ボーイズの監督時代は、ロッテ・国吉 佑樹投手(秀岳館)、広島・小園 海斗内野手(報徳学園)などを輩出。14年から24年までの10年間、秀岳館県岐阜商の監督を務め、ここでも教え子たちをプロに送り出した。昨年のドラフトでは県岐阜商時代に指導した佐々木 泰内野手が広島からドラフト1位指名を受けている。そんな教え子についてや、プロ入りするタイミングについて語ってもらった。

野手は球団、指導者とのめぐり合わせが大事

——佐々木泰選手は青山学院大に進んでドラフト1位になりましたが、この結果はどうでしょうか。

鍛治舎監督 高校に入った時、スピードはなかったものの、スケールが大きい選手でした。そのスケールを潰さないように、育てた選手です。パワー、スピードともにアップし、打守走、三拍子揃ったスケールが大きい選手として大学に送り込むことができました。

 東都大学野球リーグは150キロを超える投手が普通にいる中で、1年春は、4本塁打を打ち「神宮は狭いです!』と電話が掛かるほど勢いあるデビューでした。その、後徹底マークされ、かなり苦しみましたが、4年になりキャプテンとしてチームを牽引し鼓舞し、春秋連覇を達成。とりわけ四連覇のかかる秋は、4番の西川 史礁外野手(ロッテドラフト1位)を故障で欠いたにも拘わらず、チームを一枚岩にまとめ挙げ、個人的にも打率3割を打ち大活躍。そのままの勢いで明治神宮大会も勝ち切って有終の美を飾り、大学野球を全うしました。青山学院の安藤 寧則監督は佐々木を我慢強く見守り続けてくれました。広島にドラフト1位指名を受けるまでに上手く育てて頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。

 佐々木の高校最後の年は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた世代、コロナ禍で春センバツは出場が決まっていたにも拘わらず中止。夏の甲子園も中止となり、夢への道がすべて閉ざされた学年です。その無念さを力に変え、大学で野球を続けた選手の1人。大学入学時点では実戦経験が少なかった世代ですが、熱心に我慢強く見続けて頂きました。安藤監督に預けて良かったと思います。

 佐々木の成長を見た時、高校と大学を有機的に繋ぐことの大切さを痛感しました。

——高校時代からドラフト候補としても注目されていたスラッガーでしたが、まだ早いと思っていたんですね。

鍛治舎監督 練習から木製バットを使っていましたが、実戦で使っているわけではありません。まして、最後の1年は公式戦ゼロ。甲子園の交流試合でホームランを打ち、通算40本以上ホームランを打ってはいますが、真剣なせめぎ合いが出来ていません。練習と応用(試合)は違うし、応用技術が試される大学野球に進んで、実力をつけたほうがいいと思っていました。

——確かに高卒野手は適応するまで時間がかかりますよね。

鍛治舎監督 広島には枚方ボーイズ時代の教え子である小園 海斗(報徳学園・18年ドラフト1位)がいます。小園は高卒プロとして入団。当初かなり苦労しました。6年目の昨年に活躍して、年俸は大幅アップの9000万までいきました。もし大学にいっていたら、どうだったか。間違いなく同じドラフト1位となって、昨年、最高評価となった楽天・宗山塁君(広陵-明治大)のような評価を受けてプロ入りしていたと思います。

 同期の藤原 恭大(枚方ボーイズ-大阪桐蔭-ロッテ1位)も同じですね。有り余る素質を持ちながら、未だに苦労しています。

 また、ドラフトで、どういうチームに入るのかも重要ですね。1番良いのは出場チャンスが多い球団に入ることです。選手層が極めて厚いソフトバンクに入っても、数年経ってもなかなか状況が見えなかったら、終わりになる可能性大。藤原・小園の2学年年上の九鬼 隆平(秀岳館-ソフトバンク-DeNA)はそうでした。先日、支配下登録されましたが、今年は剣ヶ峰です。我慢して使ってもらえる下地のあるチーム、監督が居ることが理想です。

 山田 哲人選手(履正社)、村上 宗隆選手(九州学院)の場合は上手くハマったパターンですよね。2人とも小川淳司監督に我慢して使ってもらって、スーパースターの道を歩むことができました。野手の場合はチームの状況、指導者のめぐり合わせが大事ですね。

 佐々木は、サードに小園がいます。小園は、プレミア12ではセカンドをやっていました。佐々木には、ポジションに拘らず、上手くチャンスを掴んでほしいですね。そして広島は現役ドラフトでオリックス・山足 達也大阪桐蔭)を獲得しましたが、彼も枚方ボーイズ出身です。枚方OBや母校・県岐阜商出身の内野手が広島に固まってしまいました。広島では捕手で4年目の髙木 翔斗(県岐阜商)もこのシーズン前は1軍マスクを時々被るようになり、競争は激しいですが、彼らから試合の度にメールが入ってきて、今年は楽しみです。

選手が伸びる時期は様々。進路設定も飛躍のために大事

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