——ほかにもっとやることがありますね。
鍛治舎監督 まず、ピッチコムは、電子機器を使用するので資金問題もあり高校野球には馴染まないと思いますが、試合時間短縮の為のピッチクロックは導入すべきだと思います。
次にDH制ですね。この導入で投手の負担は少なからず軽減されます。メジャーリーグでは、歴史的にア・リーグにはDH制があって、ナ・リーグはありませんでしたが、22年からナ・リーグも正式導入されました。大谷 翔平投手の大活躍の影響も大きかったと思います。野球の原点アメリカにしては柔軟性がありますよね。
選手に指導する鍛治舎巧監督
一方で、日本野球の原点は、学生野球、とりわけ高校野球と東京六大学野球だと常々思ってきました。その2団体は、様々議論されているとはいえ、歴史的に軽々にルール変更出来ない立場であるのはよく分かります。
日本で注目すべきは、女子高校野球です。その加盟チームはまだ少なく、選手も少ないですが、ベンチ入りは25人で、DH制もあります。遥かに加盟チームが多い高校野球より女子高校野球の取り組みが先を行っている感があります。
7イニング制に戻りますが、高校野球は年間通して公式戦がありますから、公平公正に何が正しいのか。考えて頂きたいと感じています。
色々なことを検討しながら、最終結論を出してほしいと思います。結論が出たら、中学野球も同じ流れになると思いますし、しっかりと受け入れて対応したいと思います。
——こういう情勢の中、今、鍛治舎監督は中学球界に身をおいていますが、中学野球の役割はどのようなものだと考えていますか。
鍛治舎監督 小学生からやり続けてきたものを引き継いで高校野球に送り出す中継ぎの役割があります。小学生のチーム数がかなり減っています。小学校を変えないと、中学の野球は変わっていかない。そのためには入口を広げる必要があります。ティーボールでの野球は、なかなか普及発展しませんが、Baseball5(※)等、新しい形での野球ができ上がりつつあります。今、アフリカで爆発的に普及しています。
例えば小学校低学年、3〜4年生には、どこでも出来るから危険が少なく、用具代も少額の、このBaseball5。
5~6年生には7回制で、毎回タイブレーク無死満塁でやってみてはどうでしょうか。得点がいっぱい入るし、打順もたくさん回るし、個人の出番も飛躍的に増え、面白いですよね。投手は2イニングまで。打球が飛んでこない退屈になるような時間を絶対に作らないようなルール改正をすれば、野球を始める入口増にもつながるはずです。
そして中学生になれば、高校野球と同じルールでやっていく。野球人口減少を未然に防ぐひとつのやり方になるのではと思っています。
女子野球の飛躍的な発展の可能性も探っていく必要があります。女子サッカーが世界的な強豪になって、憧れの存在になっています。総人口の半分、女子野球も同様の役割が期待されます。差別と捉えられると困りますが、野球一家の家庭は、男女問わずお子さんが野球をやる可能性大!そういう流れになれば理想的です。20年スパンで女子野球を活性化していく必要があります。
※Baseball5=5人制×5イニング、野球とソフトボールを融合したストリート競技
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【鍛治舎 巧】かじしゃ・たくみ
1951年5月2日生まれ。県岐阜商-早稲田大-松下電器(現・パナソニック)。69年、センバツでエースとして8強、早大では5シーズン連続3割、2度のベストナインを獲得し、日米大学野球大会4番を経験。松下電器では主に外野手として活躍。引退後、松下電器の監督、全日本代表コーチを歴任。また中学硬式「枚方ボーイズ」の監督として、12度の日本一に輝く。2013年には中学全ての全国大会を優勝する「中学五冠」を達成した。2014年4月から秀岳館(熊本)の監督に就任。2016年センバツから4季連続で甲子園出場。ベスト4に三度進出する。2018年3月から母校の監督へ。20年センバツ(中止)、21年春夏、22年夏と4度の甲子園出場。甲子園での戦績は10勝7敗。24年8月に監督に退任し、現在は枚方ボーイズの監督に復帰。今月3月下旬に開催されるスターゼンカップ 第55回日本少年野球春季全国大会に出場する。