<第156回九州地区高校野球大会鹿児島予選:鶴丸12-2出水>◇21日◇1回戦◇平和リース球場

 鶴丸は2回裏、9番・前園昌之介(3年)の中前適時打で先制し、2番・武田雄斗(2年)の犠飛、3番・向原 伸之介(3年)の右翼線二塁打と続いて、計5点を先取した。

 出水は3回表、一死一二塁から2番・坂之上耕平主将(3年)の左前適時打で1点を返し、二塁まで進んだ坂之上が三盗を決め、悪送球となる間に2点目のホームを踏んだ。

 5回裏、鶴丸は3本の長打が飛び出し、4点を奪って主導権を握る。6回には果敢に足を絡めて揺さぶり、最後は代打・鎌田悠太朗(3年)の中前適時打で10点差としてコールド勝ちを決めた。

 鶴丸のエースで3番の向原。この日は3本の長打で3打点と活躍したが、マウンドでは3回で途中降板。打てたうれしさと投げられなかった悔しさはどちらが大きいかと問えば「投げられなかった悔しさです」と言い切った。

 投球練習からボールが高めに抜けて、捕手がとれない暴投が何球かあり、制球も安定せず、四球が続いた。理由はよく分からないが「下半身に力が入らない感じがした」。

 4回には2つの四球、暴投で一死二三塁のピンチを招いた。たまらず福田健吾監督は向原から2年生右腕の児玉龍太郎にスイッチ。想定外の交代だったが「練習試合でもピンチの場面で投げることが多かったから、準備はできていた」と児玉。点差は3点。失点すれば主導権を奪われかねない場面だったが、児玉は2年生らしからぬ落ち着いたマウンドさばきを見せる。

 スクイズ失敗から三本間、二三塁間の挟殺で仕留められなかったが、辛うじてバックホームタッチアウトで2つ目のアウトをとり、遊ゴロに打ちとってピンチを無失点でしのいだ。5回以降も無失点で試合を作った。

 エースの責任を果たせなかった向原だったが「児玉なら抑えてくれると信じていたので、自分は打つことに集中しようと思った」と気持ちを切り替えた。

 1打席目は四球だったが、2回の2打席目は初球を振り抜いて右翼線へ2点適時二塁打、4回の3打席目は中越えの特大三塁打、5回の4打席目は9点目となる右翼線二塁打と3本の長打を浴びせ、3打点と気を吐いた。

 この冬「飛距離を出すには?」をテーマに掲げて取り組んだことが生きたという。昨年11月、宮崎県選抜と対戦する鹿児島選抜チームの一員として宮崎に遠征した際、対戦相手の宮崎の打者や鹿児島の長距離打者の打撃を見ながら、自分なりに理由を考え「リラックスして打席に立ち、始動の瞬間で100%の力を出す」ことがコツではないかと仮説を立てた。

 夜のホテルで、同じチームになった鹿児島城西の川畑孝太郎(3年)に話すと、確かにその通りと太鼓判を押してもらった。お互いに野球の話で盛り上がり、大きな刺激になった。

 4打席目の右翼線二塁打は、手首をすぐに返してしまうと失速してファールになってしまうが、返しをなるたけ遅らせて粘ったことが長打につながった。

 打撃が好調なだけに、次の武岡台戦ではマウンドでもエースの仕事をしたい。「しっかりボールを低めに集めて、特に変化球の制球を安定させたい」と雪辱を誓っていた。