<高校野球秋季徳島大会:徳島北2-1城東>◇21日◇1回戦◇JAアグリあなんスタジアム
2009年夏に甲子園出場経験を持つ徳島北は、先発の赤澤 悠哉投手(2年)が自己最速を3キロ更新する142キロを計測するなど、力強いストレート中心で押しまくる。
対して昨年のセンバツ大会に21世紀枠で初出場を果たした城東は、粘り強く1点を追いかける。秋の徳島県大会1回戦で対戦させるのはもったいない好勝負が展開された中、ひときわ輝きを放ったのは城東のエースナンバーを背負った藤倉 和人投手(2年)だ。
50メートル走5秒9、遠投110メートルの高い身体能力を買われ、1年夏から中堅手レギュラーを勝ち取り、投手としても最速142キロまで球速を伸ばした。この夏は、岡 一成投手(3年)とのダブルエースでの期待が高かった藤倉だが、大会中に左足首を脱臼骨折し、4強に進出したチームを松葉づえで見つめ、ようやく秋季大会を前に戦列復帰することに。いわばこの徳島北戦は城東・新治 良佑監督も「練習試合でも登板できていない。ぶっつけ本番」と認める約2ヶ月ぶりの復帰マウンドであった。
それにも関わらず、藤倉は9回135球を投げ、6安打11奪三振3四球2失点(自責点1)と好投。直球も最速140キロ、9回まで常時130キロ後半が出たフォーシームばかりでなく「自分でも意識して回転を変えている」と話す130キロ台中盤のまっスラ、130キロ前後のスプリット、120キロ台後半の縦スライダー、120キロ前半の横スライダーを自在に操り、投球テンポも微妙に変えるクレバーさも光った。
ただ、試合は4回表二死一・二塁から徳島北の福田 蒼斗内野手(2年)に対し、右前先制打に失策が絡んだ2点が痛手となり敗戦。藤倉も「「フィニッシュが甘くなった」と唇を噛んだ。
この試合を視察に訪れたNPB球団スカウトは「投手としては投げ方もいいし、変化球もしっかり腕が振れている。ケガ明けとは思えないし(3打数2安打1得点の)バッティングでも野球センスを感じる」と高評価を与えた。この試合が藤倉の未来への大きなターニングポイントとなったことも事実だ。
まずはまだ俊足を出し切れる状態にはなく、ケガを完治させることが優先にはなるものの、潜在能力を鑑みればドラフトも十分視野に入る。もちろん、藤倉も「春は公式戦で勝てる投手になりたい」と責任を背負う覚悟はできている。
徳島松南ヤング時代に新治監督の熱さにひかれ、進学校・城東に歩みを進めたエースに指揮官も「もう1個スケールアップして球速が145キロに到達するようにしてほしい」と期待を込める。さらに「高卒でのドラフト指名を目指す」という大願を叶えるべく、もう1つ上の意識レベルをもって来春までの半年間を闘っていく。