<第156回九州地区高校野球大会鹿児島予選:鹿児島城西10-2鹿児島実>◇29日◇3回戦◇平和リース球場

 優勝候補同士の注目の一戦は、予想外の幕切れとなった。

 3回までは鹿児島城西・中間悠莉(2年)、鹿児島実大野 純之介(3年)。両先発がリズムよく相手打線を抑え、テンポ良く無得点が続いた。

 先手を取ったのは鹿児島実。4回表、一死一三塁として6番・髙野陽太(3年)の中前適時打で先制し、8番・徳永瑛登(3年)がスクイズを決め、2点を先取した。

大野は5回まで無安打に抑える好投。前半は鹿児島実が押し気味に試合を進めていた。

 流れが変わったのは6回裏。先頭の8番・宮永悠希也(3年)が四球で出塁。代打の坂口虎太郎(3年)が三塁線にチーム初安打となる内野安打を放つと、四球を挟んで3安打を集中。2番・橋口道雅(3年)の左前2点適時打で同点に追いつき、4番・川畑孝太郎主将(3年)の右前2点適時打で逆転に成功した。

 さらに攻撃の手を緩めず、8番・伊差川正士朗(3年)の中越え二塁打、2巡目となった9番・坂口はバックスクリーンに特大2ランを放ち、3番・古市誠剛(3年)は中前適時打。打者16人で8安打に5四球が絡み、大量10得点を挙げた。

 鹿児島実は7回表、一死一二塁と粘ってコールド阻止を目指したが、叶わなかった。

 5回まで無安打に抑えられていた鹿児島城西打線が6回裏に爆発。打者16人、8安打5四球で一挙10点を畳みかけ、シード鹿児島実にコールド勝ちした。

 「大野君は想定していた以上に良い投手だと感じた」と鹿児島城西・道端 俊輔監督(智弁和歌山出身)。直球を見せ球にしてスライダーで打たせてとる鹿実のエース大野の前に5回までは完璧に封じられていた。

 攻略のポイントは2つ。1つは「ボール球を振らないこと」。強打は鹿児島城西の看板だが、ボール球を打たされて、相手投手の術中にはまり、持ち味を封じられ、過去幾度となく煮え湯を飲まされてきた。「丸1年以上かかりましたが、ようやくそれができるようになってきました」(道端監督)。

 6回裏、8番・宮永がフルカウントまで粘って先頭打者が四球で出塁したことが、逆転劇の口火になった。6回は8安打もさることながら、ボールを見極め、5つの四球を選んだことが大量得点につながった。

 攻略のもう一つのポイントは「ボールをしっかり内側から叩くこと」。思い返せば昨夏、準決勝で樟南に完封負けした後、智弁和歌山時代の恩師・高嶋仁元監督に「右打者が外角のボールを身体が開いて三直になっているうちは、甲子園で勝てないぞ!」と厳しく言われたことを常に意識して練習していた。身体を開かず、内側から叩く練習を繰り返した。

 その成果を出したのが主砲・川畑主将だ。フルカウントまで粘り、6球目の内角高めの直球を、詰まりながらもしっかり振り切った。相手は県内で屈指の人気と実力を誇る鹿児島実。見極めて四球を選んで押出しでも十分主砲の役目は果たせるが「ここは主砲の自分がしっかり打つことでチームを勢いづけたかった」強い気持ちで勝ち越しの2点適時打を放った。

 言葉通り勢いづいた鹿児島城西打線は、前の打席に代打でチーム初安打を放った坂口が、2巡目で勝機を完全に手繰り寄せるバックスクリーンへの特大2ランを放つなど、一気呵成に攻め立てた。

 昨秋は国分中央にコールド負けで8強にも残れなかったが、一冬経ての成長の成果を示すことができた。川畑主将は「これからもコールド勝ちを狙うのではなく、自分たちがやってきたことを、強いチームが相手でもしっかりぶつけていきたい」と今後の戦いへの意気込みを語っていた。