<春季静岡県大会敗者復活代表決定戦:誠恵 9―0 吉原工>◇5日◇愛鷹広域運動公園野球場

 春季県大会地区予選で初戦は富岳館に1対0と辛勝したものの、代表決定戦では日大三島に0対30と大敗した吉原工。沼津市の私立校・誠恵は初戦で三島北に11対2と快勝したものの、代表決定戦では三島南に4対8と敗れた。そんな両校の対決となった。昨秋はどちらも地区1回戦で敗れており、代表決定戦にも届かなかった。それだけに、この春は何とか県大会進出を果たしたいところである。

 両チームともに、この大会での登録選手は12人。誠恵は3年生は10人で2年生は2人。これは、学校の方針によって、昨年4月に野球部の寮が廃止されて県外生を受け入れないようになったことが大きい。新3年生が最後の寮生ということになった。そして、この方針が打ち出されてから2023年10月に坂口明彦監督が就任した。

 誠恵としては、チームの過渡期である。「今後は、あえて県外生などは獲らないで県内で通える範囲で生徒を迎え入れる」ということになった。今春の新入生も予定としては6~7人ではないかといわれている。ただ、2年生が少ないだけに、ある程度の人数は確保しておかないと、新チームの秋季大会出場も厳しくなってしまう。

 吉原工は、公立実業校として、なかなか生徒が集まり切らない。そんな中で、野球をやっていこうという生徒を集めていくことの苦労は、察するに余りある。

 試合の前半は誠恵の吉田翔投手(3年)と吉原工の左腕菊池明日斗投手(3年)の投げ合いで、お互いに得点を与えず、誠恵は4安打、吉原工は2安打のみだった。誠恵としては、長打も出て得点機も何度か作ったのだが、菊池投手に交わされた。

 こうして無得点のまま後半に入った6回、二死二塁で9番の田上佑樹選手(3年)がタイムリー二塁打を放ち先制点を挙げた。試合そのものが膠着していってしまう展開の中で、バスターで田上選手が上手に打った。坂口監督も、「あの田上の一本が試合の流れを変えてくれた」というが、田上選手も「決めてやろうと思って打席に入っていたので、いい雰囲気をチームに作ることができた」と、喜びを表していた。そして、その言葉通りにその後誠恵は7回、8回、9回と複数点を重ねていった。

 そして、結果としては、誠恵の先発した吉田翔投手(3年)は、3安打完封だった。低めにもしっかりとコントロールされていて、しっかりと投げ切った。

 誠恵は前半はノーサイン野球で、坂口監督も「選手に任せている」と言うが、大事なところではサインを出して指示をしていくという柔軟性を持ちながら、上手に選手たちを乗せていた。

 吉原工の菊池投手は前半よく投げていたが、6回、田上選手の二塁打で失点してからは、抑えきれなかったことが悔やまれる。それでも、左からのカーブと制球の良さは評価されていいであろう。