<春季東京都高等学校野球大会:聖パウロ学園7-0目白研心(8回コールド)>◇5日◇1回戦◇スリーボンドスタジアム八王子

 聖パウロ学園のエース・大久保 勇志投手(3年)は身長168センチの下手投げの投手で、主将でもある。「1年生から試合に出ていて経験があるし、向かっていく気持ちが強いです。それに本人が立候補しました」と勝俣 秀仁監督は語る。

 主将に立候補するほどの気持ちの強さは、投球にも表れる。それは剛球を投げ込むわけではない。その逆で、遅い球を恐れず投げる勇気だ。この遅い球があるので、115キロほどの球も速く見える。

 目白研心との試合でも、遅い球を効果的に使い、ストライク先行の投球をする。追い込まれた打者には、遅い球が、より効果的になる。大久保は5回までは、安打を1本も打たれていない。6回表目白研心の3番・伊賀 凱哉外野手(3年)に左中間への二塁打を打たれたものの、打たれた安打は、この1本だけ。7回を投げて球数は81、被安打1、奪三振6、四死球2の好投だった。

 狭山西武ボーイズ出身の大久保は、下手投げの投手と対戦した後、監督から「やってみないか」と勧められたことから、下手投げに変えた。投げてみてしっくりいったことから、下手投げを続けている。

 体は小さいけれども、下手投げで度胸よく投げている姿を見て思い浮かんだのは、漫画「ドカベン」で、山田太郎とバッテリーを組んでいた里中智だ。「小さな巨人」と言われた里中の高校時代の身長は168センチ、65キロという設定になっている。そして大久保は168センチ、58キロで、体重は里中より少し軽いものの、身長は同じだ。聖パウロ学園の「小さな巨人」の今後の投球が楽しみである。

 なお聖パウロ学園は序盤、走者を出すものの2回裏の1点止まりだったが、4回裏に3番・片江 悠斗捕手(3年)、4番・渡邉 丈太郎内野手(2年)の連続二塁打などで4点を挙げ勝利を決定づけ、8回表は2番手の宮澤 凌空投手(2年)が奪三振2の三者凡退に抑え、その裏、2番・山村 昂久外野手(3年)の2点二塁打により7対0の8回コールドが成立した。