<春季東京都高等学校野球大会:東海大菅生5-0世田谷学園>◇6日◇2回戦◇スリーボンドスタジアム八王子

 背番号「11」の剛球に会場からどよめきが起こった。

 東海大菅生が5点をリードして迎えた8回、エース左腕・上原 慎之輔投手(3年)の後を受けた藤平 寛己投手(3年)がマウンドに上がると、2回4奪三振と圧巻の投球を披露した。

 自慢の真っ直ぐを信じきった。8回は先頭から二者連続で三球三振に仕留めると、3人目もフルカウントから自慢の真っ直ぐを投じて三者連続三振。「慎之輔がいい投球をしていたので、続きたかった」と迫力のある直球を投げ込んだ。

 春に向けて5キロのダンベルを指で持ち上げるなど、腕のリストや指先の強化に着手。秋まではストレートも走っていなかったというが、生命線となる最速146キロの直球は力強さを取り戻した。

 そんな藤平にとって忘れられない戦いがある。昨秋の東京都大会で初戦敗退を喫した国学院久我山との試合だ。

 西東京の強豪と初戦から激突。1回戦屈指の好カードとして注目を浴びたがチームは惜敗。あと1点が遠かった。

 当時は上原が本調子ではなく、エースナンバーを任されたのが藤平だった。しかし、先発を任されたのは「17」の川崎 稜太投手(3年)。試合では登板機会もなく、最後までベンチから仲間を見守った。

「大事な試合を任せてもらえず悔しかった」

 背番号1を背負いながらマウンドに立つことが出来ず、人一倍悔しさを味わった。「投げられなかった経験は忘れないようにしている」と、闘士を燃やし、春季大会での好投に繋げた。

 若林 弘泰監督も「今日は圧巻でした」と手放しだった。春季大会制覇、その先にある夏の甲子園に向け右腕の活躍は欠かせないピースとなりそうだ。