<春季東京都高等学校野球大会:江戸川8-6狛江>◇6日◇2回戦◇JPアセットスタジアム江戸川

 前日の小平南との初戦では、エースの石橋 諒樹投手(3年)が14奪三振を奪う好投で完封勝ちしている江戸川。また、狛江は4日の初戦で足立学園に3対6から9回に4点を奪って逆転勝ち。どちらも勢いに乗っているチーム同士である。

 江戸川の芝英晃監督は、「選手たちは野球が好きで、本当によく練習するので、ボクは野球の練習環境を提供してあげるということに徹しています。ディズニーの理念で、ディズニーランドには完成形がないと言うじゃないですか。それと同じで、野球の練習環境も完成形はありません。次は何をしてあげようか、何を提供していこうかということで取り組んでいます。だから、次に何をしていかれるのかということをいつも考えています。それで、選手たちが気持ちよく練習してもらえればいいと思っています」という考え方だ。

 そうした中で、昨夏に芝体制での新チームスタート時点では、選手たちもいくらか戸惑いがあったところから、チームも変わっていった。一緒に過ごす時間を極力長く作っていくことで、選手たちに考え方も伝わっていったのである。

「今までも質は高かったのだとは思いますが、練習の量を増やしていくことで、結果的には質も上がってきているのだと思います」と、芝監督は実感している。特に、バットスイングは徹底してやっていったという。その結果として、ほとんどの選手が強い打球をしっかりと打って行かれるようになっている。ことに、3番板敷 光太朗選手(3年)、4番石田 悠捕手(2年)に初回に先制の2点を叩き出した6番の叶内 駿輔主将(3年)などは、アウトになってもいい打球を放っていた。

 打線好調の江戸川は3回までに7対0と大きくリードした。4回に3点返されても5回に1点を追加。しかし、芝監督は、「狛江は打線が強いことは分かっていましたから、7点までは取られてもいいんだということはベンチでも言っていました。実際、それに近い形になってしまって、ちょっと危なかったんですけれどもね(苦笑)。コールドゲームは、考えてもいませんでした。石橋は連投でも一回りだったらそんなには打たれないだろうということで7回から行かせました。イメージしていたのとは、まったく違う展開になってしまったけれども、先発の遠山が6回まで持ってくれたことが大きかった」と、背番号10の先発遠山 侑岐投手(3年)の粘りの投球での踏ん張りも評価していた。

 狛江は3回までに0対7とリードされたものの、ひるむことなく積極的に打って行くスタイルを貫いた。4回に7番小泉 凛太郎選手(3年)の二塁打から3点を返し、6回にも2回途中からリリーフのマウンドに登って9番に入っていた赤石 圭駿投手(3年)の二塁打などで2点を返し3点差とする。

 さらに、9回には先発して降板し三塁手に回っていた3番の中澤 和哉選手(3年)が、石橋投手の速球を叩き返す二塁打から1点を返した。序盤で最大7点開いて、あわやコールドゲームかという試合だったが、最後は2点差まで迫ったのは立派だった。このあたりは、西村昌弘監督が積極的に打って行こうという姿勢を指導してきた成果とも言えよう。

 私立校も授業料無償化になるなどで、都立校の部活はますます厳しくなっていく状況でもある。しかし、都立の中堅校同士が、熱心な指導者の下で、こうした内容のある試合を展開していくことで、東京の野球少年たちが、「自分もここで野球がやりたい」と思えるようになれば、それは素晴らしく価値のある試合だったということが言えよう。そんなことを思わせてくれた、好試合だった。