<春季東京都高等学校野球大会:東亜学園5-4関東第一>◇7日◇2回戦◇JPアセットスタジアム江戸川

 初日から3日間雨天中止になるという異例の展開になった春季都大会は、6日、二松学舎大付が初戦敗退したのに続き、7日は関東第一東亜学園に初戦敗退するという波乱があり、大会が始まってからも、異例の展開になっている。

  関東第一は昨夏の甲子園の準優勝校であり、坂本 慎太郎投手(3年)、越後 駿祐内野手(3年)ら、その時のメンバーが残っている。そのうえ坂本はU18日本代表候補でもある。東亜学園は1回戦で東洋を16-1の5回コールドで破り、シード校で2回戦から登場の関東一との対戦になった。東亜学園の武田 朝彦監督にすれば、関東第一が強いことは分かっているものの、「長いオフシーズンが明けて、1回試合をしているので、相手に関係なく、試合の入りは、うちに分がある」と考えていた。そして東亜学園は、序盤に猛攻を仕掛ける。

 関東第一はU18日本代表候補の坂本が先発のマウンドに立った。その立ち上がり、二死二塁から東亜学園の4番・政岡 亨汰内野手(3年)が右中間を破る三塁打を放ち、東亜学園が1点を先制する。それでもまだ1点。関東第一の力からすれば、さほど問題ではない。しかし、2回裏の東亜学園の攻撃は、試合の展開に大きな影響を与えた。

 この回、2本の安打が続き無死一、二塁となり、8番・荒井 哉汰三塁手(2年)は投前に送りバント。二刀流で野手でもある坂本は、素早く捕球して三塁に送球。しかし、それが悪送球となり、二塁走者が生還した。さらに先発投手でもある9番の佐々木 俊(3年)が送りバントで、一死二、三塁とし、1番・磯部 翔貴外野手(3年)が右前安打を放ち2人が生還し、東亜学園がリードを4点に広げた。

 3回以降は坂本の気迫の投球に、東亜学園は追加点を挙げられない。後半になると、関東第一の攻撃も、徐々に威力を発揮し始める。それでも東亜学園のエース・佐々木は、この春の関西遠征で近江と対戦し、9回を完投して失点2に抑えたことが自信になっている。この完投で、「自分の感覚がつかめるようになりました」と語る佐々木は、後半に入っても疲れは感じなかった。けれども、関東第一の猛攻に、力みが出てきた。

 7回表、関東第一は敵失絡みで1点を返す。さらに8回表には安打4本を連ねて2点を挙げ、1点差に迫る。

 そして9回表、関東第一は、この回先頭の1番・小林 響葵外野手(3年)が右前安打で出塁し、代打の阿部 賢士郎外野手(3年)がバントで送り、3番・坂本の一ゴロで小林は三塁に進んだが、二死。追い込まれた関東一であるが、主将で準優勝メンバーでもある4番の越後がセンターオーバーの三塁打を放ち、土壇場で追いつく。

 けれどもその裏、東亜学園は、この回先頭である途中出場の5番・五十嵐 遥貴内野手(3年)が三塁打を放つ。「坂本選手の球が伸びていたので、振り負けないように、振り切りました」と五十嵐遥は言う。

 関東第一は続く佐藤 海斗捕手(3年)は、申告敬遠で歩かせる。佐藤はすぐに二盗として二、三塁となる。続く7番・高見 遼汰内野手(3年)も歩かせて満塁にする策もあるが、「坂本はそこまでのコントロールはない」と関東第一の米澤監督。満塁にすると押し出しの懸念もあり、勝負に出た。そこで高見は一ゴロ。50メートルが6.2秒の五十嵐遥は、果敢に本塁に突っ込む。「うちはゴロゴー。ゴロストップは基本的にありません」と東亜学園の武田監督は言う。

 本塁はクロスプレーになったが、五十嵐遥は、「足が入ったのが分かりました」と言う。足からの滑り込みで、捕手のタッチをよけて、決勝のホームを踏み、東亜学園がサヨナラ勝ちを収めた。最後は五十嵐遥の足の速さと、思い切りの良さが、東亜学園に勝利をもたらした。

 敗れた関東第一の米澤監督は、「現状の力です。よく追い上げました」と語る。エースの坂本は4月3日~5日まで、U18の代表候補合宿に参加した。疲労などの影響があったのか、気になるところだが、米澤監督は、そうした影響をきっぱり否定して、「いい刺激になり、プラスになっています。そうした経験をチームに持ち帰ってくれています」と、その効果を語る。

 関東第一は、夏はノーシードで臨むことになる。「いつ以来ですかね」と、米澤監督が言うほど、近年ではなかったことだが、春季大会の初戦敗退は、2012年以来13年ぶりとなる。二松学舎大付もノーシードであり、東東京大会は混戦が予想される。もっとも、この春季都大会自体が、混戦模様になっている。