<春季東京都高等学校野球大会:国学院久我山9-2明大中野>◇8日◇3回戦◇コトブキヤスタジアム

 明大中野の田中 俐希投手(3年)は、1年生の夏から公式戦に登板している好投手。国学院久我山打線がどう攻略するか注目された。しかし明大中野の岡本 良雄監督はこの日の田中について、「調子は良くなかったです。球が走っていなかった」と語っているように、制球の乱れに失策が重なり、傷口を広げた。

 1回裏国学院久我山は二死から3番・山下 誠健外野手(3年)の右前安打と4番で先発投手でもある柳本 晴(3年)が四球で一、二塁とし、5番・藤原 平太捕手(3年)の右前安打に失策が重なり山下が還り1点を先制する。さらにワイルドピッチで柳本も還る。

 けれども国学院久我山の柳本の投球も不安定で、2回表は失点こそなかったものの、3四球を記録している。そして、3回表、明大中野は1番・小嶋 佑空外野手(3年)の二塁打などで1点を入れる。

 4回表に国学院久我山は2番手として、やや変則な投げ方の松崎 悠太(3年)が登板するが、安打3本に失策が重なり、明大中野が1点を入れ、同点に追いつく。もっとも、この回は併殺もあり、1点止まりだったことが、明大中野としては響いた。

 そして4回裏、国学院久我山に打のヒーローが現れる。明大中野の田中の制球の乱れもあり、1安打、2四球で一死満塁として、9番・大宝 瑛都内野手(2年)の左前安打で国学院久我山が1点を勝ち越す。ここで国学院久我山の尾崎 直輝監督は、1番の打順に入っていた投手の松崎に代えて、モネケ ジェレミー結(3年)を代打に送る。モネケは左前安打を放ち2人が還り国学院久我山はリードを広げる。

 モネケは父親がナイジェリア出身で母親が日本人という家庭に生まれ、身長190センチ、体重118キロの巨漢。城東ボーイズ時代から評判の強打者だ。大きな選手は育てるのには時間が必要で、今は代打中心の起用になっている。それでもそのポテンシャルにプロも注目しており、尾崎監督は三塁手や二塁手で育てる方針だ。進学校の国学院久我山にあってモネケは勉強の成績も優秀で、大学野球での活躍が期待される。もちろん、夏の大会までは時間があるので、高校でもひと暴れするかもしれない。

 国学院久我山はこの回、さらに1点を加え、6-2と4点をリードする。試合後半の勝負のカギは国学院久我山の3番手投手が握る状況になった。そこでマウンドに上がったのは2年生の関谷 一輝だ。この春公式戦デビューした関谷は、小金井シニア出身で、「シニアでもエースで、理解力があり、創意工夫ができます」と尾崎監督は評価する。関谷は、球の伸びを感じる投手だ。明大中野打線を完全に抑え込み、4回を投げて球数は45。四死球は1あるものの、無安打で無失点に抑えた。

 関谷は、秋季都大会はベンチ入りもしていない。「冬場は、体作り。特に柔軟性を意識しました」と関谷は言う。目標とする投手は、左右の違いはあるものの、ヤクルトの石川 雅規だ。「打ち取るピッチングが好きです。コントロールの良さを目指しています」と関谷は言う。尾崎監督の評価も合わせると、かなりクレバーで、ユニークな投手だ。

 一方、明大中野の田中は5回途中で降板。国学院久我山が7回に2点、8回に1点が入ったところで9-2の7回コールドが成立した。