全国各地で秋季大会が盛り上がっている10月。5日からは秋季東京都大会が開幕する予定となっているが、その一方で9月までに大会が終わっている、また地区予選が行われ、早々に秋を終えたチームが現れている。
愛知では、私学4強の一角・東邦が予選で敗れ、早々にセンバツ出場への道が閉ざされたことは話題になった。春以降の逆襲を狙って、長いオフシーズンで体力と技術を磨くことになるだろう。
そんな東邦に限らず、冬場はどのチームにとっても選手たちが大幅に成長できるチャンスである。力を蓄え、春、そして勝負の夏へ向かう時期だが、フィジカルを強化しても、スキルアップに繋がらないケースが見られる。
逞しいフィジカルを手にしても、思うように体を動かず、スキルアップが出来ていない。体は動いてもプレーが変わらないなど、トレーニングの成果が反映されないことが、現場ではよく聞かれる。
ではなぜそういったことが発生するのか。今回は、270校以上が受検する人気の体力測定・アスリートテスト、通称ゼット測定を担当する古岡覚さんに、専門家として現場で感じていることを伺った。
フィジカル×連動性×スピード=スキル
ゼット測定に携わり、5年ほどのキャリアを積んでいる古岡さんも、「体力があっても、上手くならないって、悩んでいるところは多いですね」と現状を語る。チームによってはトレーナーが常駐しているところ、そうでないところの違いはあれど、やはり専門家の目から見ても、フィジカルとスキルの結び付けに悩むケースは見受けられている。
そのうえで、NSCA※の資格を持つ専門家として、そして数多くの選手の測定を担当した経験をもとに、要因を分析する。
※ケガの予防およびパフォーマンスアップを目的としたメニューを計画・実行できる知識と技術を持つ人だけに認められた民間資格の1つ
「スピードと全身の連動性がポイントになるかなって思います。やっぱり連動性が上手い選手は、下半身の力を上半身へ伝えることができるので、投げるにしても、打つにしても生きてくる。なので、フィジカルを強化した成果が、キチンとパフォーマンスアップに繋がりやすい傾向にあると思います。
実際、高校1年生の場合だと、このあたりが上手なケースが多いんですけど、なかにはフィジカルが充実していて、連動性に課題がある選手がいることもあります。なので、ここによって違いますね」(古岡さん)
よく取材に行くと、「トレーニングの後に素振りをして、筋肉の使い方を確認している」というような、トレーニングと技術練習をセットでやる。また、ひたすら技術練習をこなすことで体力を付けるといったところもあった。
チームによって様々な考えのもとで、フィジカルとスキルアップを図っている。が、古岡さんの考えでいえば、どれだけ連動性の向上に繋げられるかが、ポイントということになるだろう。
実際、普段の測定項目の中でも、「メディシンボール投げが良ければ連動性は高いし、立ち三段跳びが良ければ足の速い傾向がある」と話し、その選手の身体能力の高さ。センスがどれほどなのか、垣間見えるという。
ゼット測定では、計21種目の計測結果をそれぞれランク評価。また21種目を4項目に分類して、4つそれぞれでポイントを付けて、総合ポイントを評価するといった分析まで実施している。その4つ項目の中でも、スピードと体幹と呼ばれる項目が、足の速さや連動性をチェックする項目になっているのだ。
また、古岡さんは、「理解できる範囲でやれるならやった方が良い」と話すのは、体に関する知識を持つことだ。
「運動生理学や解剖学のような学術を理解できないと、どうしても指導者・トレーナーだったり、SNSで流れている情報だったりを表面的でしか理解できず、鵜呑みにしちゃうと思うんです。
実際、NPBに進んだ選手を見ても、動きながら理解することでスキルアップしていると思うんです。ダルビッシュ 有さん、大谷 翔平さんも最初から活躍出来たかと言われたら、そうじゃない。苦労しながら学んで理解しながら、成長に結び付けたと思います。なので、出来ることなら理解しながらトレーニングできるように、勉強した方が良いと思います」
もちろん、高校生にとっては難しい知識・専門用語は多い。それらすべてを理解することは難しい。だから古岡さんは、「理解できる範囲でやればいいし、トレーナーがいるなら質問すればいい」とアドバイスを送る。