秋季大会が本格的に行われている10月、来春のセンバツ出場に前進するチームが現れることになる。その一方で、秋季大会で敗れ、夏の甲子園を見据えて、研鑽を重ねる日々を送っているチームもある。

春、そして夏の大会で勝ち上がるために、連戦を戦い抜くフィジカル。トーナメントで勝つためのスキル。そしてメンタルを一冬かけて鍛えていくチームがほとんど。そのためにトレーニングに打ち込むわけだが、やれば必ずスキルが上がるわけではない。

思ったような動きができず、むしろパフォーマンスが下がる場合も現場からは聞いたことがある。

どのチーム、選手もこういったケースを避けたいところ。では何に気を付け、どこを鍛えればいいのか。270校ほどが受検する体力測定・アスリートテスト、通称ゼット測定を担当する古岡覚さんにケーススタディとして、3つのケースごとで、フィジカルによるスキルアップのポイントを聞いた。

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新基準バットにもアジャストしよう!ホームランに必要な筋力は?

いまの高校野球界にとって、多くの需要があるといっていいのは、ホームランだろう。新基準バットが2024年から導入されたことで、打球速度が低下して、飛距離が落ちている。

センバツでは柵越え2本、夏の甲子園では7本しかホームランが出ないようになり、現場は悩みの声が多く聞こえている。なかには戦略を変えて戦うところもあるが、どうやって飛距離を伸ばすのか。創意工夫を凝らし続けているチームもいる。

専門家である古岡さんが、飛距離増加のポイントに挙げるのは5つだ。

「下半身、背筋、体幹、握力、そして柔軟性の5つの要素が一般的に考えて、必要だと思います。これらが揃っている選手は、スイングスピードが速い傾向があります。
特に背筋や体幹は大事です。ボールを前で捉えた瞬間って、後ろ側の筋肉で支えるような形になるんです。そのときに軸がぶれることなく力を伝えるには、背筋はもちろん、連動する体幹が大事になるので、スキルにおいては大事です」

ゼット測定では21種目に分けて選手たちのフィジカルを分析する。先ほど古岡さんが重要だと語った背筋だけでも2種目の測定項目があり、なかでもアッパーバックと呼ばれる、下方にあるバーベルを、うつ伏せの状態からみぞおちへ引き上げる種目がある。

これで広背筋と呼ばれる部位、肩甲骨から腰にかけて伸びている筋肉の強さを調べることができ、「ここの強さによって、ミートの瞬間に支えることができるか」がポイントになってくる項目だという。

他ではあまり聞かれない測定項目だが、理屈で考えればバッティングには必要な要素である。30年以上の歴史があるゼット測定ならではの測定と言っていいだろう。

そんな筋力とともに柔軟性についても、「股関節は柔らかい方が良いです」と訴える。というのも、「軸足に乗せた体重を移したり、体も上手く回せなかったりすることで、腕だけでのバッティング。引っ掛けた打球だったり、押し込みが弱いスイングになったりする」のが理由だという。

ただこれらの筋肉や関節を繋ぎ合わせるのは、連動性にあるという。

「体つきが大きい人が飛ばせるのは当たり前ですが、華奢な選手でも飛ばせる選手もいると思うんです。体、力の使い方が上手いんですけど、そういった選手たちはゼット測定のメディシンボール投げの数値が高い。全身の連動性が高いので、少ない筋力でも飛ばせているので、連動性はマストの要素ですね」

具体的なトレーニング方法の一つとして、メディシンボールをスイングに近い形で投げる。横で投げることで連動性を高めることを古岡さんは勧める。

下半身で作ったパワーを、股関節で繋いで上半身へ。背筋と体幹で軸のブレを抑えて腕へ力を運んでいき、バット、そしてボールにパワーを伝える。この連動性が、フィジカルがスキルに繋げていくシステムになる。

こうした点からも、フィジカルとスキルは親和性が高く、密接に関わっているといっていいだろう。

剛速球を投げたい投手必見!ポイントは股関節のねじり?!

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