2024年も各都道府県で開催された地方大会も含めて、数多くの熱戦が見られた。そんな死闘の数々に比例するように、選手治療のために試合を中断するケースも多く見られた。

大会運営も対応策として、この夏の甲子園は大会3日目までは2部制を実施。気温が高まる時間帯を避けて、午前と夕方以降の2部に分けて試合をするようにしたが、それでも中断するシーンが見られたのが現実だ。

2023年には5回終了時に10分間の給水時間を設定したクーリングタイムが採用。2年続けて対策を講じるほど、甲子園は暑く、そして勝つには暑さに負けない心身の強さが必要になってくるといえるだろう。

「勝つか負けるかの世界」で求められる体 30代の青年監督が語った、夏に勝てる必要条件

そんな夏の甲子園の暑さ、そしてクーリングタイムを経験したからこそ、「(フィジカルの強さは)必要不可欠な時代になってきていると思います」と語ったのは、埼玉・浦和学院で指揮官を務める森大監督である。

森監督は2021年の秋から母校・浦和学院の監督に就任。31歳という若さで名門校の指揮官になると、2022年にはセンバツで4強。2023年には夏の甲子園に出場したが、初戦で仙台育英に9対19で敗戦。この夏は埼玉大会・準々決勝で春日部共栄に5対6で敗れて、2年連続の夏の甲子園とはならなかった。

とはいえ、この夏はDシードから埼玉大会に入り、ベスト8まで駆け上がった。公式戦・5試合を戦い抜いた選手たちの姿に、森監督は及第点を与えていた。

「この夏は準々決勝で負けてしまいましたが、5試合を戦ってもフィジカルの疲労は少なかった。夏バテしない体づくりを意識してやり続けてきた成果は、ある程度あったのではないかと感じています」

森監督の話す「夏バテしない体づくり」というのは、浦和学院に限った話ではない。多くのチームが意識することである。そんな課題に対して、森監督が必要性を感じているのは、激戦区・埼玉を戦い、甲子園を知っているからこそだった。

「古き良き時代に習って、暑いところでプレーすることで精神的に強くする必要もあると思います。高校野球独特のトーナメント1発勝負、1球で終わるとか、そういう精神的に研ぎ澄まされた真剣勝負、勝つか負けるかの世界ですから。
ただ埼玉の場合、最大7連勝しないと優勝できないなか、特に5連勝以上となってくると、暑さに対して慣れるまでの体の忍耐力も、夏に勝ち続けていくには必要だと感じています。だから、体と心の両方に強さが必要で、バランスは大事しながら、鍛えてあげないといけないと思うんです」(森監督)

加えて、2024年からは新基準バットが導入された。「間違いなく打球の飛距離が出にくくなった」と森監督も断言できるほど、およそ半年使っていても飛びにくくなっている状況。その追い風もあり、「フィジカルの重要性は高まっていると思います」と森監督のなかでも、再認識させられている部分となっている。

よく聞く、「夏は打てないと勝てない」という言葉。新基準バットの導入によって、より難しくなっただろう。打ち勝つには、一定水準以上の打撃技術は大前提で、フィジカルをどれだけ充実させるかがポイントになってくるといっていい。

酷暑の夏を乗り切る意味でも、浦和学院が意識して取り組むフィジカルの強化・調整は、今後の高校野球界全体で考えても、より求められる要素と言っていいだろう。

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