新基準バットの影響で、センバツでは柵越えの本塁打は2本に減少したが、夏の甲子園は、柵越えの本塁打が7本という結果に終わった。試合数など様々な違いはあれど、結果だけを見れば、新基準バットに徐々に適応しているのではないか、と見える結果だ。

技術向上はもちろん、体力的な要素なども今回の結果に関係してくる部分だろう。シーズンインしたばかりの春よりも、最終調整で仕上がった夏の方が、フィジカル的にはハイパフォーマンスを発揮できる。強く、鋭いスイングで長打を飛ばすことは、十分想像できる。それだけに新チームも、キチンとしたフィジカル強化をしていくことが、新基準バットへの対応を含めて、今後より求められる要素の1つと考える。

そのための第一歩として、ゼットが実施しているアスリートテスト(通称・ゼット測定)のような体力測定である。

効率性を高めるための計測

ゼット測定で数多くの学校に足を運んでいる担当者・田月裕也さんも、測定することの重要性を強く訴える。

「そもそも、高校野球に費やすことができる時間は2年半と限りがあります。そのなかで全国の球児たちは勝負をしていく世界なので、体づくりも含めて様々なことを効率よくやっていく必要があると考えています。そのために、測定を行うことによって効率性が上がる手助けになると感じています。
やはり測定をすることで、まず自分自身の強み・弱みが見えてくる。その結果、チームにおける自身の立ち位置がわかってくると思うんです。そうやって、自分のことを理解したうえで、メニューを立ててトレーニングしていくことで、より多くの効果を得ることができます。なので、測定することは非常に意味があります」

実際、意識をもってトレーニングをすることで、効果が高まることは、『意識性の原則』と呼ばれる学術で証明されている。漠然とやらないためにも、まずは体力測定をすることは、大きな意味があるのだ。

とはいえ田月さんによると、ただ体力測定をすればいいわけではないという。
「最低でも2回はやってほしいですよね。たとえばオフシーズン前と、終了後の2回。他にも新チーム発足時や新入生の入学時など様々ありますが、多いチームだと4~6回ほど年間で実施しています。選手たちのモチベーションを上げるためだったり、管理するためだったりとチームごとで目的が違いますけど、毎年定点的に実施することをお勧めしています」

定点計測がもたらすチームへのメリット

たとえば、9月と2月に計測したら、翌年も9月と2月に計測するといったように、時期をできるだけ固定化することを、田月さんは推奨している。その理由は、チームビルディングの観点からのアドバイスである。

「同じ時期に実施するからこそ、選手もチームも歴代の同時期での先輩たちや全体の平均の数値と比較することができます。そうすると、『今年は筋肥大を高めたいけど、メニューをどう組めばいいのか』と悩んだときに、先輩たちの結果を参考に、オフシーズンの過ごし方を考えることができます。そうやって、チーム作りをするにあたって、測定結果をベースにメニューを組むことが出来るんです。
さらに戦績面も組み合わせれば、上位進出を果たした世代の測定結果が、取り組んできた練習メニューの裏付けとなります。そのチームにとっての練習メニューの引き出し、育成プログラムが確立されるというわけです」

測定結果と戦績面の相関関係については、田月さんも過去にこんな経験があるという。

「オフシーズン前は、学校別ランキングで200位前後にいたチームが、シーズン直前で150位前後までジャンプアップしたことがあったんです。そうしたら大会でも結果を残して、最終的に夏の大会でベスト4進出など、大躍進を果たしたんです。けど、こちらの立場でみると、他の学校と比べてオフシーズンでの伸び率が高く、秋と比べて体力面での立ち位置が変わったことが躍進の理由の一つにはなっているということがわかるので、面白いですよ」

こういったことが見えてくるのも、30年近く球児たちのためにゼット測定を続けてデータが蓄積されているからなのだ。

選手育成の裏付けとなる

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