仙台大は東北工業大との接戦を制し、開幕からの連勝を5に伸ばした。先発の渡邉 一生投手(3年=日本航空/BBCスカイホークス)は立ち上がりから調子が上がらず、3回途中で降板。2番手の浦野 冬聖投手(4年=東農大二)が5回に自らの野選で1点を失うも3回3分の1を1安打4奪三振1失点と粘投し、リーグ戦初勝利を挙げた。

 浦野は威力のある速球を武器に持つ左腕。2年夏の部内リーグではチームのスピードガンで自己最速151キロを計測している。2年時に春、秋の新人戦で先発するなど下級生の頃から期待を寄せられていたが、これまでリーグ戦の登板は3年春の1試合、1イニングのみ。自身2度目の登板で初白星を手にした。

 浦野は試合後、「自分にとって、うれしい1勝です」と笑みを浮かべた。「これまで何回かベンチに入らせてもらったけどなかなか登板機会に恵まれなくて、最後の秋は『開幕1戦目から入ってやろう』という気持ちで練習に取り組んできました」。直近では6月の全日本大学野球選手権でし烈な競争を勝ち抜きベンチ入りを果たし、試合では初回から肩を温めたが、出番は回ってこなかった。

 大学では2年時に投球フォームを何度も変更するなど、本人いわく「迷走」を繰り返し、一時はイップス気味の状態に陥った。3年春にリーグ戦デビューを果たすも、その後もケガや不調が続きトンネルから抜け出せずにいた。

 大学ラストシーズンに向けては「最後の大会なので、リーグ戦にかける思いは4年間通して一番強かった」と話し、チャンスを掴むため変化球の強化に取り組んだ。高校時代から持っていた「まっすぐ一本」の考え方を変え、直球のほかにカウント球にも決め球にもなるチェンジアップとフォークを磨いたことで、投球の幅が広がった。実戦でも結果を残し、リーグ戦で活躍するイメージはできていた。

 そんな中、7月下旬にまたしても肘を故障。約1か月間投げられない時期があったものの、浦野は「投げられない期間をトレーニングに励む期間にしよう」と前向きに捉え、肩甲骨の機能を向上させるトレーニングやメディシンボールを使った練習で精力的に汗を流した。

 結果的に早期復帰を果たしただけでなく、今年の初めは141、2キロまで落ちていた球速が140キロ台中盤~後半までアップ。直球、変化球ともに安定して投げられるようになり、この日も直球でも変化球でも三振を奪う、「らしい」投球を披露した。

 大学卒業後は社会人野球に進む意向だという浦野。その前に、やり残したことがある。遅咲きの左腕は「まだまだ改善のしようはある。コンディションを整えながら技術をレベルアップさせ、リーグ優勝に貢献して東北王座も勝って、神宮のマウンドに立ちたい」と力強い言葉を口にした。