富士大が八戸学院大に勝利し、開幕8連勝で3季ぶり39度目のリーグ優勝を決めた。初回に敵失で1点を先制すると、その後も3回にいずれもプロ注目打者の4番・渡邉 悠斗内野手(4年=堀越)、5番・佐々木 大輔内野手(4年=一関学院)の連続適時打が飛び出すなど4点を追加。投げてはこちらもドラフト候補に挙がる佐藤 柳之介投手(4年=東陵)、安徳 駿投手(4年=久留米商)のリレーでリードを守り切った。

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 先発した佐藤は、しなやかなフォームから140キロ台後半の直球とスライダーなどのキレのある変化球を繰り出す好左腕。昨年は全国大会でも活躍し、大学日本代表候補に選出された。「ドラフトにかかるなら一番上でいきたい」とプロ入りへの思いが強まる一方、貫いてきた「チームを勝たせられるピッチング」を心がけ大学ラストシーズンに臨んだ。

駆けつけた大勢のスカウトが見守る中、初回から三者連続三振と圧巻の立ち上がりを披露する。その後も2~6回は単発3安打で本塁を踏ませない好投が続いた。7回に八戸学院大の4番・小林 日出内野手(4年=能代)に本塁打を浴び、次打者に四球を与えて降板したものの、7回途中4安打1四球8奪三振1失点と先発の役割を果たした。

 佐藤は試合後、「春は負けていた分、優勝することができてよかった」と安堵の表情を浮かべた。今秋はこの日の登板を含めてここまで5試合に先発し、5勝をマーク。計34回3分の1を投げて防御率1.83、39奪三振と好成績を残しており、エース左腕として優勝に大きく貢献した。

佐藤は好調の要因の一つに「気持ちの持ちよう」を挙げる。今春はマウンド上で「ここで四球を出したらどうしよう、ここで打たれたらどうしよう」といったマイナスの感情を抱いたり、視察のために訪れたスカウトの姿を気にかけたりしてしまうことが多かったが、今秋は「キャッチャーミット目がけて自分のボールを投げていれば大丈夫」と平常心で投げられているという。

また今夏は安田 慎太郎監督から秋に向けて体力面の課題を指摘され、走り込みにも力を入れた。元々体に熱がこもりやすく、球数がかさむと乳酸がたまる体質だといい、今春のリーグ戦は最長6回でマウンドを降りることもあった。佐藤自身も体力面の課題を感じていたことから、夏は体力強化のためランメニューを増やしたという。

「走るのは苦手なんですけど、『やらないと負ける』と思ってほかの人より走るくらいの気持ちでやりました。冬よりもやったくらいです」

実際、今秋の試合でも中盤以降は「疲れていない実感」があったといい、今秋は2度、9回完投勝利を挙げるなど練習の成果を発揮している。

 リーグ戦は21日まで続き、来月は24日にドラフト会議、26日からは明治神宮大会出場をかけた東北地区大学野球代表決定戦(東北王座)が開催される。富士大は佐藤を含む7人がプロ志望届を提出予定。喜びも束の間、気の抜けない1か月が始まる。佐藤は「東北王座に向け、『投げる試合は全部0に抑える』くらいの気持ちでしっかりやっていきたい」と勝って兜の緒を締めた。