東北工業大が仙台大を1対0で下し、開幕6試合目で今秋初勝利を挙げた。仙台大戦での勝利は2013年春以来。今春リーグ戦を制し2年連続で全日本大学野球選手権に出場した強敵に土をつけた。

 試合は東北工業大・後藤 佑輔投手(4年=仙台育英)と仙台大・佐藤 幻瑛投手(2年=柏木農)による投手戦となった。5回まで両チーム無安打。息の詰まる攻防が続く中、6回、東北工業大の9番・山田 翔琶内野手(1年=東北)が右翼席に運ぶ本塁打を放ち均衡を破った。

 結局、東北工業大の安打は山田の本塁打1本のみ。エースの後藤が4安打11奪三振の好投で虎の子の1点を守り切り、164球完封勝利をやってのけた。後藤は140キロを超える直球と多彩な変化球を操るリーグ屈指の左腕。仙台育英時代は公式戦登板わずか1試合の投手だったが、大学で大きく成長を遂げた。

 そんな後藤は大学ラストシーズンとなる今秋、初戦の東北学院大戦は5回4失点、2戦目の東北福祉大戦は3回7失点と本領を発揮できずにいた。それだけに、この日の白星は格別。勝利の瞬間は「ここまで調子も悪くてなかなか結果が出ていなかったので一安心。素直に『やっと、よっしゃ嬉しいな』という気持ちでした」と喜びを噛みしめた。

 また後藤はこの日の勝利でリーグ戦通算勝利数を10に伸ばしたが、仙台大戦は通算9試合目の登板にして初白星。「仙台大さんは自分からしたらめちゃくちゃ強い相手。つなぐバッティングが春から嫌でしたが、そこを要所で抑えられたのが大きかった」と手応えを口にした。

 この日最大のピンチは2安打と1四球で1死満塁のピンチを背負った8回。変化球で空振り三振を奪い2死とするも、次打者はフルカウントに。「あそこの場面は、いつも通りの投球だったら四球で押し出しだったと思う」。前節までであれば同点、逆転を許していたかもしれない局面、144キロ直球でまたしても空振り三振に仕留め、本塁を踏ませなかった。

  「精神論はあまり好きではないんですけど、『抜けたくない』という気持ちでリリースの瞬間に手首にぐっと力を入れて、それがうまくハマりました」と後藤。今節に向けては、制球が定まらず抜け球が増える課題を克服するため、遅くまでグラウンドに残って念入りに調整を重ねてきた。その努力がかたちになった瞬間だった。

一方、後藤は「今は幅広くトレーニングをしていて、どれが結果につながっているかまだ分かっていない。今回がたまたまでは嫌なので、YouTubeを見たりして、今日良かった要因を探したいです」と冷静さも失っていなかった。来週以降もシーズンが続くのはもちろん、大学卒業後も社会人チームで硬式野球を継続する予定があるからだ。

 学生野球の先の野球人生を見据える左腕は、「ここから先は結果が出なかったら降ろされる、いつ野球が終わってもおかしくない状況になる。(大学の残りの試合で)次のステージにつなげられる投球をしたい」と力強く誓った。