広陵のエース・高尾響投手がプロ志望届を提出した。甲子園で4度出場。5勝を挙げ、高校日本代表にも選出された。今年のプロ志望届を提出した投手の中で実績はNO.1。最も勝てる投球ができる投手だ。

 夏ではやや苦しい投球だった。1失点完投勝利を挙げた甲子園・熊本工戦では、最速146キロ、平均球速138.6キロ。3回戦の東海大相模戦では5失点と悔しい夏の終わりだった。

選抜の高知戦では、最速145キロ、平均球速139キロとあまり変わっていない。夏は寒さが残る3月に比べれば平均球速は上がりやすい。他のドラフト候補は軒並み3キロ前後上がっているのを見ると、ストレート面は物足りなさが残る。

 高尾本人に聞くと、コンデイションがよくなく、投球フォームを崩していたと語る。高校日本代表合流時では、選抜時のフォームに戻したが、投球を見ると改善はできなかった。

 高尾の3年間で最も凄まじかったのは、選抜後に行われた高校日本代表の強化合宿。1イニングとはいえ、最速147キロ、平均球速142.6キロだった。130キロ後半のフォーク、120キロ後半のツーシームも凄まじく、対戦した打者の話では高尾が最も良かったと語る。強化合宿ぐらいの平均球速で先発として好投する姿が見たかった。

 各球団から高尾の熱が上がらないのは夏の大会での投球が影響していると思う。

 ただ、投球術を見るとプロの世界にも順応が早そうだ。プロで活躍する投手は一定以上のボールの強さはもちろん、内外角への出し入れ、緩急の使い方、変化球の精度など求められるものはたくさんあるが、まずはアマチュア時代に比べて格段に狭くなるストライクゾーンに対応できるか。高校生投手で140キロ後半の速球、切れ味鋭い変化球を投げながらも、プロに入ると中々結果を残せない投手はこの狭いゾーンに対応できていない。

 高尾の甲子園での投球を見ていくと、狭いゾーンでも出し入れができる制球力の高さと投球術がある。ここ一番で見せるストレートは強い。さらにフォークもあり、リリースポイントも安定していて、順応できるだけのセンスの高さはある。

 これほど出来上がっている投手は大学に行く必要性はそれほどない。本人はプロか社会人野球の選択肢を挙げたが、賢い選択だと思う。社会人のトップはプロの二軍に匹敵するぐらい、レベルの高い舞台であり、簡単に結果を残せるカテゴリーではない。

 そのため、どちらに進んでも1年目から活躍はできないと思う。多少は投げられるけど、しっかりとフィジカルを強化して、ストレートの出力を高めて勝負できる段階から先発テストと、段階を追って育成していけば、必ず台頭する投手だろう。参考となるのがロッテの中森俊介投手(明石商)だ。1年目は体作りを行い、2年目から実戦登板を増やし、3年目は一軍で14試合登板、今季は4試合で3先発、1勝のみだが、一歩ずつプロの投手を歩んでいると思う。

 高尾にはこういう階段の登り方をしてほしいと思っている。

 広陵は昨年のスラッガー・真鍋慧内野手(大阪商業大)に対し、3位縛りをしたが、高尾にも上位指名を設定していた場合、その場合は指名漏れになると思う。夏では上位に指名するほどのパフォーマンスは残していないためだ。

 ただ是が非でもプロに行きたい場合は下位指名ならば十分にリターンは見込める投手だと評価したい。

 高尾の3年間は勝つ投手はどんな投球をすればいいのかを見せてくれた。将来的には阪神・西勇輝投手のような投手に育つのではないかと期待している。

<高尾響(たかお・ひびき)>
飯塚ボーイズ出身
1年春からベンチ入り
1年秋は明治神宮大会準優勝を経験
2年春の選抜でデビューし、ベスト4入り
2年夏の甲子園では初戦突破
3年春の選抜では1勝
3年夏の甲子園では熊本工戦で1失点完投勝利
2024年U-18代表選出
甲子園での投球成績
2年春(23年) 3試合 防御率1.78 25.1回 21奪三振 自責点5
2年夏(23年) 2試合 防御率2.12 17回  12奪三振 自責点4
3年春(24年) 2試合 防御率2.45 18.1回 23奪三振 自責点5
3年夏(24年) 2試合 防御率5.06 10.2回 9奪三振  自責点6
       11試合 防御率2.53  71.1回 65奪三振  自責点20

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