<秋季東北地区高校野球宮城県大会:古川学園9-2石巻西>◇25日◇準々決勝◇石巻市民球場
古川学園が石巻西相手に快勝し、2年連続の秋季東北大会出場に王手をかけた。初回に2番・大柳 悠音外野手(1年)の2点本塁打で先制すると、その後も小刻みに加点し9安打9得点と打線が機能。3投手の継投でリードを守り切り、7回コールド勝ちを収めた。
2番手で登板し3回2失点だった伊藤 凌駕捕手(2年)は、県大会初戦の聖和学園戦は「8番・捕手」でフル出場し主戦の櫻井 琉貴投手(2年)を好リード。この日も6回からはマスクをかぶった。
「二刀流」の始まりは今夏の県大会の約2か月前。山崎雄大監督から突然、「ピッチャーの練習をやれ」と声をかけられた。山崎監督に真相を尋ねると、思わぬ答えが返ってきた。
「『体重100キロを切らなかったら夏覚悟しておけよ』ということで、最初はダイエットの意味を込めて、キャッチャー練習だけでなく走り込みなどを行うピッチャー練習もさせたんです。練習試合でマウンドに上げてみたらゲームをつくるようになって、今ではピッチャーとしても立派な戦力になりました。嬉しい誤算です」
伊藤は投手としてプレーすることについて「疲れますね」と本音を漏らすが、「自分で投げて試合をつくれるので、キャッチャーとはまた違った面白さがあります」と話すように兼任を楽しんでいる。
マウンドでの経験はリード面にも生きているといい、ピンチの場面や追い込んだ場面、3ボールになった場面など、場面ごとに「自分だったらどういう球を投げたいか」を考えながら配球できるようになった。
投手としての武器は体格を生かした直球かと思いきや、変化球だという。以前から「遊び」で投げていたカーブ、スライダー、スプリット、チェンジアップを駆使して打者を翻弄する。この日は納得のいく投球内容ではなかったものの、3回にピンチで空振り三振を奪うなど持ち味も発揮した。
肝心のダイエットはどうなったのか。伊藤は「夏前が95キロで、今は100キロ。いつの間にか増えてしまって、(監督に)怒られました」と苦笑いを浮かべる。
学校の机上に「アポロチョコレート」を置いているのを山崎監督に見つかったこともある。もちろん授業中に食べるのは許されないが、「試合では糖質も必要」と考えた指揮官が1イニング0点に抑えるごとにアポロチョコレートを食べさせてくれるようになった。
山崎監督は「私のバッグには残り2試合分のストックがあります」とニヤリ。フィールディング面などを考慮すると体重を絞ることも重要。ただ、信頼関係ゆえの“ご褒美”が原動力になっているのも事実だ。伊藤は「ピッチャーの練習を始めたばかりの頃は公式戦で投げられると思っていなかった。ここからも一戦ずつ楽しんで、気を抜かずに戦って東北大会にいきたい」と前を向いた。