大学野球界でも1、2を争う厳しさで知られる東都大学野球。その厳しさに、「戦国東都」の愛称がつけられるほどだが、そこで1部リーグに所属している國學院大は、4度リーグ優勝を経験している強豪。NPBはもちろん、社会人野球などへ数多くの卒業生を輩出。現在も高校時代に活躍した実力者が数多く所属する。
そのなかで奮闘し続けて、現在は正捕手としてチームの戦力となり、夏には大学日本代表にも選出された逸材が、國學院大・神里陸捕手(東海大相模出身)だった。
芯に当てることがとにかく大事!
4年春までの7シーズンで10本の二塁打、さらに大学代表でも複数安打を放ってきた神里。いまやチームに欠かせない存在となったが、木製バットを使い始めた東海大相模時代は、決して思い通りに扱えていたわけではなかったという。
「金属バットなら詰まっても打球は飛んで、外野手と外野手の間に落ちることもある。でも木製バットでは芯に当たらないと飛ばないんです。同級生で高校からプロ入りした西川僚佑外野手(現くふうハヤテ)や山村崇嘉内野手(現西武)らは高校生の頃から芯で捉えていたんですけど、自分はなかなか捉えられなかったです」
東海大相模時代、自主練習のとき程度しか使っていなかったそうだが、國學院大に進学して本格的に使うようになってからは、ノックバットでのロングティーで、扱い方を覚えた。
「ノックバットは普通の木製バットより軽くてヘッドが扱いやすいけれど、細いのでミートしづらいんです。身体をうまく使えばロングティーも飛んでいくんですけど、変な扱い方をしたら捉えることができない。これをやったおかげで、バットの扱い方を身体にしみ込ませることができました」
腕になるべく力を入れないようにして、股関節と体幹で振る意識を持つこともポイントだという神里。「実際はもちろん腕で振るんですけど、股関節と体幹で振るように意識をする。そうしたらバットが勝手に走って、打球も飛んでいくようになりました。その感じは普通のバットを持ったときにも生かすことができたんです」と語り、あくまで自然体でスイングすることが重要だと訴える。
だからこそ、高校球児たちにも改めてこんなメッセージを残した。
「『強い打球を打ちたい』と思うとどうしても力が入ってしまうんですけれど、木製バットは芯に当てることが大事。まずは力を入れずに強く振れる身体の使い方、バットの使い方を覚えることで、芯にミートすることに集中できると思います。身体の使い方を覚えたら、100%の力で振る必要はなく、80%の力で振ってミートすれば強い打球は打てる。軽く振れる方がミートできる、というのが自分の考え方です」
そんな神里だが、現在はミズノの木製バット、ソフトバンク・近藤健介外野手(横浜出身)モデルを使っているそうだ。
バランスがそんなに上過ぎず、コントロールしやすい、という1本は大学2年生春から採用。重さ880グラム、長さは85センチとやや長いが、ミドルバランスの形状になっている。というのも、最初の頃はトップバランスのバットを使っていたが、振り遅れてしまうことを理由に変更。「いろいろ試してみて、振り抜きやすいミドルバランスのものに変えました」と悩み抜いた先に、現在のバットに巡り合ったようだ。
強い打球を飛ばしたい、遠くに打球を飛ばしたい。誰もが一度は夢を見ることだろうが、まずはミートしなければ始まらない。それは金属であれ、木製であれ変わらない。そこを追求し続けたからこそ、神里は木製バットに適応し、必要な1本も見つけられたに違いない。
背伸びをするのではなく、身の丈に合った1本で、まずは確実なバッティングを極めるのも、木製バットへ適応するための第1歩になるだろう。
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